行動分析学研究
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重度知的障害児におけるカードによる援助要求行動の形成・般化・維持
佐藤 和彦島宗 理橋本 俊顕
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2004 年 18 巻 2 号 p. 83-98

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抄録

(1)研究の目的 : 重度知的障害児にカードによる援助要求行動を形成し、類似した場面と類似していない場面への般化と維持を検討した。(2)研究計画 : 場面間の多層ベースライン法を用いた。(3)場面 : 地域の知的障害養護学校において、登校時・下校時の着替え、給食、遊び、課題学習の時間に指導を行った。(4)参加者 : 発話がなく、担任の手をひっぱるなど、要求行動のレパートリーが限られていた男子児童2名(8歳、11歳)。(5)介入 : 遅延プロンプトの手続き(遅延5秒)と分化強化の手続きを用いた。(6)行動の指標 : 場面ごとに従来の要求行動とカードを使った要求行動の頻度を測定した。(7)結果 : 標的行動の形成に成功し、2、4ケ月後の維持も確認した。類似した場面間の般化はみられたが、類似していない場面への般化はみられなかった。しかし、場面間般化が起こらなかった場面でも同一場面内で新しい援助対象を要求する標的行動が自発された。(8)結論 : 遅延プロンプトの手続きの有効性が確認された。また、複数の類似していない場面で同じ要求行動を指導し、分化強化の手続きを確実に行うことの重要性が示唆された。

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© 2004 一般社団法人 日本行動分析学会
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