行動分析学研究
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乱数生成行動と行動変動性 : 50年を超える研究の流れと今後の展望(<特集>行動変動性の実験研究とその応用可能性)
長谷川 芳典
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2008 年 22 巻 2 号 p. 164-173

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抄録
過去50年以上に及ぶ「乱数生成行動」研究を概観し、行動変動性研究に関する3論文をコメントし、今後の展望を述べた。乱数生成行動研究は概ね1950年代から始まっているが、「なるべくランダムに」という言語的教示の曖昧さ、被験者が投げやりに振る舞っても対処できないこと、学習要因を考慮に入れていないこと、といった問題点があった。いっぽう行動変動性の研究は、それらの問題点を解消し、「人間が生成した乱数列はどこに問題があるのか」という特性論的な見方から、「オペラント条件づけ手続によってどこまでランダムな乱数列を生成させることが可能か」という、行動変容の視点で新たな可能性を開いた。しかし、一口に行動変動性と言っても、反応のトポグラフィーやIRTに関する微視的な変動性から、ランダムな選択行動や新しい形を作るといった巨視的な変動性までいろいろある。微視的な変動性は分化強化として扱えるが、巨視的な選択行動の変動性は弁別行動として論じるべきである。今後の展望としては、微視的、巨視的という区別に留意しつつ、発達障害児の一部で見られる常同的・反復的な選択行動を改善するための効果的な支援方法の確立といった現実的な課題にさらに取り組む必要がある。さらに長期的なライフスタイルにおける一貫性と変動性をめぐる問題も、行動分析学の課題になりうる。
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© 2008 一般社団法人 日本行動分析学会
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