抄録
研究の目的 本研究では、嘔吐不安を訴えて来院したひきこもり男性に対して、食事量を指標として、精神科デイケアを利用したエクスポージャーを実施し、その効果を検討することを目的とした。研究計画 基準変更デザインを用いた。場面 精神科クリニックのデイケアにおいて介入を実施した。被験者 介入開始時19歳のひきこもり男性で、特定の恐怖症と診断されていた。介入 標的行動は、「昼食を一定量食べ、その後13時から15時までのデイケアプログラムに参加、あるいは見学する」こととした。基準1では食事量300gを、基準2では400gを目標として、それらの目標を達成するまで、あるいは昼食時間が終了する13時までは食事の部屋にとどまるという取り決めを行った。昼食時間が始まって30分経過しても目標に達しない場合には、もう少し食べるよう口頭で促した。行動の指標 食事量を測定した。結果 基準1では300gを、基準2では400gを食べられるようになった。また、その効果はそれまで対象者が一度も経験したことがなかったデイルーム場面や外食場面にも般化した。結論 嘔吐不安を訴える男性に対して、不安そのものへの介入ではなく食事量を指標としたエクスポージャーの適用が有効であった。