生物教育
Print ISSN : 0287-119X
59 巻 , 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • 中村 依子, 須山 実咲, 向 平和, 日詰 雅博
    2017 年 59 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    小学校理科教科書第5学年「動物の誕生」では,ヒメダカ(Oryzias latipes)を観察材料として胚発生を観察し,その観察結果を記録してまとめる活動が扱われている.メダカの卵の中が変化して体が作られていく過程を理解するためには,卵の中の様子を一時点で捉えるのではなく,発生過程を継続的に捉えることが重要である.しかし,発生の観察において,無作為に採取した生きた胚の断続的な観察だけでは児童がメダカの発生段階を正しく認識できていないことが問題点として挙げられる.そこで本研究では,児童が生きた胚の発生段階を認識しやすくする補助が必要であると考え,ヒメダカの初期胚を発生段階を追って詳細に観察するとともに,いつでも目的の発生段階の観察が可能な固定胚を作製した.固定胚の適性を評価するため,大学生を対象として,生きた胚と固定胚において観察できる構造に差はないかを調べると,血管,血球,心臓など動きのあるものは生きている胚の方が識別できたが,他の構造や器官については大きな違いはなかった.そして小学生を対象として固定胚を一連の発生段階を示す標本として用いた発生観察の授業実践を行い,その有用性を検討した.その結果,生きた胚を観察して発生段階を考える上で,観察の補助として固定胚を用いた授業では教科書を用いた授業と比べて,メダカの卵の産卵後日数と発生過程のどちらにおいても,正しく認識できた児童の割合が高かった.よって,生きた胚の観察にいつでも各発生段階を観察できる固定胚を併用することは,教科書を用いて観察を行うより生きた胚の発生段階を認識できることが示唆された.

  • 杉村 順夫, 森本 弘一, 尾山 廣
    2017 年 59 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    昆虫には優れた免疫系が発達しているが,脊椎動物で見られるような抗体生産や免疫記憶を伴う獲得免疫機能は備えていない.昆虫の免疫系は主として2種類に大別でき,細胞性と液性応答がある.

    実際に,これら応答反応についてカイコ幼虫(Bombyx mori)を低温麻酔した後,種々の接種源を注射して調べた.細胞性防御応答として,墨汁の注射後3時間目には血球の食作用活性が観察され,1日後では血球に墨炭素粒子の蓄積が認められた.また,ポリスチレンビーズを注射したとき,血球にビーズが取り込まれることが明確に観察できた.液性応答である化学的防御についても,煮沸処理した大腸菌または大腸菌由来のリポ多糖(LPS)を注射した幼虫を用いて調べた.寒天平板カップ法で体液の抗菌活性を調べると,注射後6~24時間目では安定的に抗菌活性が検出された.また,注射後6,12,24時間目に採取した体液を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離したとき,抗菌タンパク質が誘導合成されていることが明らかになった.本研究結果から,昆虫の免疫応答は有益な教材として高校で受け入れられるものと考えられる.

研究報告
  • 中道 貞子
    2017 年 59 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,現行の5社の高等学校「生物基礎」教科書―2011年または2012年検定済「生物基礎」見本本(初版)と2016年検定済「生物基礎」見本本(改訂版)―について,取り上げられている用語,および学習指導要領の各中項目や観察・実験および探究活動に割り当てられている頁数を調査・比較した.5社のいずれかの教科書で扱われている用語の総数は,初版の541から改訂版では527に減少した.しかし,5社が共通して扱っている用語は,改訂版では初版の1.5倍近くに増加した.また,それぞれの教科書に取り上げられている用語は,5社の改訂版全てで増加したが,初版での用語が少ない教科書ほど増加数が多かったため,改訂版での用語数は教科書間で差が小さくなった.さらに,太字で示されている用語は改訂後に増加する傾向があった.教科書の総頁数は,初版に比べて改訂版では教科書間の差が著しく小さくなり,各中項目に配当されている頁数の割合の差も小さくなった.「発展」や「参考」など,枠囲み記事として扱われている部分に関しても,改訂版では5社の頁数の割合の差が小さくなっていた.さらに,観察・実験および探究活動の数や配当頁数は改訂版では減る傾向が見られた.これまで,『初版に比べて改訂版では,各社の教科書の内容が似通ってくる』という声を聞くことがあったが,「生物基礎」の教科書で扱われている用語や各中項目の配当頁数などに関して,今回の調査でそのことが明らかになった.

研究資料
  • 濱田 由鶴, 日詰 雅博, 向 平和, 中村 依子
    2017 年 59 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    アブラナ属の生活環の短い品種(ファストプランツ)は,育種学や植物学の研究に用いられるだけでなく,教育用植物としての活用が報告されている.いくつかの突然変異系統やF1雑種やその交配によるF2雑種が市販され,遺伝実験に利用可能であるが,分子生物学的手法に関する報告は見当たらない.そこで,遺伝形質が遺伝子の本体(DNA)によって伝わることを可視化できる方法として,PCR法によるDNA多型を用いる遺伝実験を,ファストプランツを用いて行う方法について報告した.これまでの遺伝の学習では,優性と劣性の関係にある遺伝形質に関する遺伝が扱われてきた.そのため遺伝形質の遺伝から遺伝子がDNAによって伝わることを理解することは難しかったが本実験法はその困難性を打開する可能性があると考えられる.

  • 前川 洋, 金澤 昭良
    2017 年 59 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル フリー

    学校現場において,発光バクテリアの活用があまり進んでいないことから,Photobacterium kishitaniiを用いて教材化を改めて試みた.1つは,バクテリアの発光が酸素に依存していることを確かめる教材である.大型試験管でバクテリアを液体培養し,そこに市販の錠剤(CaO2)を入れると,錠剤から発生する酸素とともに光る部分が液面に向かって上昇する様子が観察できた.もう1つは,バクテリアの発光量が重金属(Cu2+及びZn2+)の影響を受けることを確かめる教材である.段ボール箱製の暗箱の中に太陽電池を取り付け,バクテリアの発光によって太陽電池から生じる電圧を測定する装置を作製した.小型シャーレに入れたバクテリア懸濁液に重金属を加え装置に入れると,電圧が時間経過とともに下がり,重金属の影響を示すことができた.

feedback
Top