生物教育
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研究論文
進化のしくみの誤概念修正を目指したハンズ・オン教材の開発と評価
―植物の種子散布形質を題材として―
田川 一希
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2023 年 64 巻 2 号 p. 103-121

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抄録

進化のしくみに関する代表的な誤概念として,目的論的な進化観と用不用の進化観がある.本研究では,これらの誤概念を修正し,進化のしくみに対する正しい理解を獲得させることを目的として,実際の生命現象を題材としたハンズ・オン教材を開発した.この教材では,風で種子を散布する植物の散布器官(冠毛など)が海洋島において衰退する適応進化をテーマとして取り上げ,突然変異と自然淘汰による進化の過程をモデルを用いて再現した.大学生を対象に教材を用いた授業実践を行い,進化に関するテスト問題の正答率を実践前後で比較した.その結果,誤概念の修正を含む進化の定義に関するテストの得点は,実践前後で有意に上昇した.また,生物の形質の進化を突然変異と自然淘汰の観点から説明する学生の割合は,実践前後で有意に高くなった.しかし,目的論・用不用に関する誤概念の修正は限定的であった.また「自然淘汰は偶然に生じる」という誤概念を保有する学生の割合が高くなった.これらの課題を解決し本教材の教育効果を高めるには,構造化された探究やコンピューターシミュレーションの導入が効果的かもしれない.

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© 2023 一般社団法人 日本生物教育学会
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