生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
研究論文
高校生の生命観に関する基礎的研究
―「生命」と「生物」の捉え方の分析―
金本 吉泰鈴木 誠
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2023 年 64 巻 2 号 p. 94-102

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抄録

教育基本法第二条には「生命を尊び,自然を大切にし,環境の保全に寄与する態度を養うこと」と定められている.これを受け,学習指導要領においても「生命を尊重する態度」の育成が図られている.本研究では,高等学校における「生命の尊重」の扱いを明らかにするために,平成30年に告示された高等学校学習指導要領における生命の尊重に対する記述を調査した.また,高校生の「生命」の捉え方を明らかにするために,公立高等学校の生徒553名を対象として,「生命」と「生物」とは何かという問に対して自由記述で回答する質問紙調査を行った.その結果,理科における生命の尊重と他教科における生命の尊重ではその対象に違いが見られること,高校生は生物概念と生命概念を明確に区別できているわけではないこと,生命観の下位概念として先行研究で示されていた「機械論」「客観的知識」「アニミズム」「擬人化」「生気論」「価値」「命」といった概念が高校生に備わっていること,が確認された.また,高校生の生命観については,例えば「死」や「平等性」といった下位概念を付け加えて考えていく必要性が示された.

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© 2023 一般社団法人 日本生物教育学会
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