生物教育
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研究論文
高等学校に保存されている哺乳類および鳥類剥製標本の実態と歴史
斎木 健一黒住 耐二
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2023 年 65 巻 1 号 p. 2-17

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抄録

本研究では戦前にさかのぼる古い歴史をもつ千葉,静岡,大阪,福岡の高等学校14校に保存されている哺乳類と鳥類の剥製標本731点を調査し,その実態を明らかにしたうえで,当時の法令,教科書その他の文献等の資料をもとに標本が教育上のどのような必要性から揃えられたのかを推定し,今後の活用方法について考察した.剥製標本は1900(明治33)年以降に購入されたものが多く確認された.その目的は,実物の観察を通して正確な概念を得るためであったが,実際には教科書の記述内容を目視により確認する目的で使用されたと推定される.このため,剥製標本の種類は当時の教科書での哺乳類・鳥類分類体系に沿って目のレベルで分類群を網羅するように選ばれていた.しかし,1942(昭和17)年に行われた中学校教授要目の改正で,扱う分類群が綱レベルまでに変更され,内容も生物の生態や生理を重視したものに変更されたため,目ごとに剥製標本で形態を確認するような授業は行われなくなり,購入標本もほとんど認められなくなった.現在では,高等学校学習指導要領に哺乳類,鳥類の目レベルの分類に関する内容はない.しかし教科書には,保護色や擬態,相同に関する説明など分類以外で剥製を活用できる箇所は多い.また,剥製標本には,種の保存法やワシントン条約等で取引が規制され希少かつ入手困難な標本も多く,生物多様性保全や生態系保全などを考える際の教材としての活用も期待できる.

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© 2023 一般社団法人 日本生物教育学会
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