2016 年 62 巻 2 号 p. 57-62
症例は 63 歳、女性。40 数年前から関節リウマチに罹患しており、10 年以上メトトレキサート(Methotrexate:MTX)、タクロリムスを服用していた。201X 年 8 月下旬に左耳下部腫脹と疼痛を認めたため、近医内科クリニックより総合病院耳鼻咽喉科を紹介受診した。造影 MRI にて左耳下腺深葉に腫瘍性病変を認め、穿刺吸引細胞診にて class Ⅲ b の結果であった。悪性の可能性が否定できないため、手術加療目的に九州大学病院耳鼻咽喉科紹介受診となった。耳下腺原発悪性腫瘍が疑われたため、10 月 6 日に左耳下腺全摘術を施行した。永久病理診断の結果、組織型は Diffuse Large B Cell Lymphoma(DLBCL)、EBER 陽性であったため MTX 関連リンパ増殖性疾患と診断した。術後 MTX 内服を中止し、以後再燃を認めていない。本邦では関節リウマチ罹患者の多くが MTX を服用している。MTX 服用中の関節リウマチ患者に頭頸部腫瘍性病変を認めた場合は、本症を十分に念頭に置き、診断、治療にあたる必要がある。