バイオフィードバック研究
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短報
メンタルローテーション課題におけるオープンスキル種目選手の行動的および認知的特徴 : 課題成績と随伴性陰性変動 (CNV) を用いた予備的検討
松本 清今川 新悟佐久間 春夫
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2019 年 46 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

 競技中のオープンスキル種目のスポーツ選手は, 常に変化する環境をより速くより正確に把握してより適切な行動の選択を行う必要がある. 松本ら (2017) は, メンタルローテーションを変化に富む環境を認知するための心的操作のひとつと考え, メンタルローテーション課題中の選手の脳波 (EEG) を記録し, その処理過程を反映するとされるRotation related negativity (RNN) と課題成績を用いて選手の認知的および行動的特徴を調査した. 一方, 課題成績は, メンタルローテーションを行う前すなわち命令刺激が提示される前の準備状態とも, 少なからず関連していると思われる. 随伴性陰性変動 (CNV) は予告刺激を伴う反応時間課題において, 命令刺激に先立って出現し, 命令刺激への期待や注意, 運動の準備などを反映してその振幅が変動する. そこで本研究では, 課題に臨む準備状態における選手の行動的ならびに認知的特徴について予備的に検討するために, 熟練したアイスホッケー選手 (Athlete群) と運動習慣の少ない大学生 (Control群) のメンタルローテーション課題中のEEGから改めてCNVを導出し, その振幅と課題成績との対応関係について検討を行った. 課題を前半と後半 (1セット, 2セット) に分けて, 課題の正答率, 反応時間, CNV振幅を算出し, 群間やセット間の比較を行った結果, 正答率はControl群が高く, 反応時間はAthlete群の方が短かったが, 両群とも2セット目に正答率は上昇し反応時間は短縮していた. CNVに関しては, Athlete群ではセット間の変化は見られず, Control群では2セット目に右頭頂部においてマイナス電位方向へ増加した. これらの結果は, オープンスキル種目選手においては, 正確性よりも速さを優先し, 時間経過に伴う課題成績の向上は, 命令刺激提示前の準備状態よりは刺激提示後の処理過程の向上によってもたらされたことを示唆していると考えられる.

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© 2019 日本バイオフィードバック学会
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