本研究の目的は、外来治療を受ける患者の通院や服薬といった受療行動に関するセルフエフィカシーを測定する尺度を開発し、その信頼性と妥当性について検討することであった。まず、項目の整理検討のために先行研究から項目を収集し、内容的に妥当であると判断された項目を尺度化した。大学生256名および精神科初診患者61名を対象に、作成された尺度の因子構造および信頼性を検討した。探索的因子分析の結果、11項目1因子が抽出された。両群のアルファ係数は学生群では.91、患者群では.93であり、信頼性を有していることが確認された。基準関連妥当性を検討するために、自尊感情尺度を用い、また構成概念妥当性を検討するために、SDSを用いて患者群に回答を求めた。その結果、高い妥当性を有していることが明らかになり、臨床的に有用な尺度であることが示された。本研究で作成された受療行動に関するセルフエフィカシー尺度(Self-Efficacy Scale for Treatment Acceptance; SESTA)は、行動医学的なアプローチが必要な医療領域においてスクリーニング尺度として用いることができる。特に、介入が長期におよぶ場合や受療者のモチベーションの維持が難しい場合、本尺度を用いて受療行動に関するセルフエフィカシーを同定し、低い得点を示す者には、受療継続を狙ったセルフモニタリングや環境統制などの行動的介入、あるいは通院や服薬に対する十分な心理教育などが有効であることが示唆された。