抄録
本稿では、ソーシャルサポート研究における諸問題について論及した。ソーシャルサポートのコンセプトにはいくつかの定義があるが、大きく構造的支援と機能的支援に大別される。構造的支援は、ネットワークの中での結び付きや、その大きさ、婚姻状況その他の人口動態的変数からなり、機能的支援は、提供された支援やその支援の利用可能性についての個人の認知からなるとされる。このようにソーシャルサポートの概念が広いため、一つの方法でソーシャルサポートのすべての視点を網羅することや、すべての研究に適する測定法を見つけることは困難である。とりあえず、わが国で適用可能なソーシャルサポート測定尺度の開発が望まれる。
ソーシャルサポートと疾病との関連では、ふたつのモデルが提案されている。一つはソーシャルサポートが緩衝要因として働くとするもの (緩衝仮説) であり、もう一つはソーシャルサポートの欠如そのものが強いストレッサーとして働くとするもの (主効果仮説) である。構造的支援の面からはソーシャルサポートの主効果を、機能的支援の面からは緩衝作用を支持する知見が多くみられる傾向にある。しかし、ソーシャルサポートが疾病の進展、発症、回復にどのような生理学的メカニズムでかかわっているのかは十分解明されていない。ソーシャルサポートのより適切な測定法、心理学的、生理学的に信頼性の高い方法を用いることが重要である。
また、心血管疾患から他の慢性疾患へ、男性から女性へ、成人から子どもあるいは高齢者へ研究の幅を広げるべきで、そのことによりソーシャルサポート研究の知見が一層蓄積されることになる。