本研究は不安の交互作用モデルを検討するため,刺激としてホワイトノイズとポルノビデオ,状況として表情が観察される条件と非観察条件を設定し,刺激要因と状況要因が不安反応に及ぼす影響について調べた。その結果,身体危機を引き起こすホワイトノイズでは,状況によってさほど変化はなく,自我脅威を引き起こすとされているポルノビデオでは,観察される条件において不安反応が有意に増大した。さらに,特性不安尺度としてR-Sを用いた分析では,R群は主観的反応を抑圧し,特にポルノビデオ条件でその傾向が顕著であり,生理指標とのズレが大きいことが示された。これらの結果は,特に自我脅威を引き起こすような事態については,刺激要因だけでなく,むしろそれがどのような条件下において呈示されるかといった状況要因について考慮して設定することの必要性を示すものである。また,そこで表出される不安反応は防衛機制が働きやすいため,生理指標をも含めた多次元からなる不安反応を測定することの必要性も示唆された。