抄録
本研究の目的は,小学生における社会的スキルの獲得の程度を測定する尺度(SSS-E)を作成し,社会的スキルの獲得が,心理的学校ストレスの軽減にどのような効果を持っているかを検討することであった。まず,調査1において,小学校4年生から6年生までの1,405名を対象として社会的スキルの獲得の程度を測定した。その結果にもとついて因子分析を行ったところ,児童の社会的スキルには,「向社会的スキル」「引っ込み思案行動」「攻撃行動」という3因子があることが明らかにされた。次に,調査IIおいて,小学校4年生から6年生までの1,283名を対象として,小学生用学校ストレッサー尺度(嶋田他,1992a),小学生用ストレス反応尺度(嶋田他,1992),および,本研究で作成されたSSS-Eを用いて,児童の学校ストレッサーとストレス反応,社会的スキルの獲得の程度を測定した。そして,社会的スキルの獲得の程度と学校ストレッサーを独立変数,ストレス反応を従属変数とする2要因の分散分析を行った。その主効果と交互作用の組み合わせの結果から,社会的スキルの獲得は,小学生の心理的学校ストレスに対して軽減効果を持つことが示された。これは,適切に社会的スキルを獲得している児童ほど,ストレス反応の表出が少なかったことを示唆するものである。最後に,学校生活において児童が適切な社会的スキルを獲得することの意義,また,学校ストレスに対するマネジメントの方策としての社会的スキルトレーニングの有効性が討議された。