文化人類学
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特集 インフラを見る、インフラとして見る
福島沖に浮かぶ「未来」とその未来
高橋 五月
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2018 年 83 巻 3 号 p. 441-458

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抄録

原発事故から7年が経過した福島は「未来」に関する語りで溢れている。実際には、福島の未来を事前に知ることは誰にもできない。しかし、それでも(もしくは、だからこそ)人々は盛んに未来について思い描き、予測し、期待し、交渉する。本稿では、現在の福島に存在するたくさんの「未来」の中から、福島県沖に浮かぶ洋上風力発電設備「ふくしま未来」に注目し、「インフラストラクチャー」を手がかりとして、文化人類学的立場から未来について批判的に考える。

福島沖浮体式ウィンドファームプロジェクトは、東日本大震災からの復興事業の一環として発動し、民間企業と大学から成り立つコンソーシアムが経済産業省から委託を受け運営している。コンソーシアムによると、この新しいエネルギーインフラは日本の未来、福島の未来、そして漁業の未来を切り開くという。しかし、2013年に開始したこのプロジェクトは現在も進行中である一方で、今後中止される可能性が高いとされる。本稿の目的は、福島原発事故後に出現した未来に関する語りをもとに、現行する近代化論の枠の中で反復的に生成される未来主義の問題点を明らかにし、未完成インフラの議論を参考にしながら未来主義とは異なる新しい未来の可能性を模索することである。

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2018 日本文化人類学会
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