文化人類学
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特集 景観の力学を記述する——日本の山村を対象にした異分野との協働研究をもとに
近世の「山里」における社会変化
景観・生業・政治権力の関わりのなかで
町田 哲石川 登内藤 直樹
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キーワード: , 焼畑, 生業, 産物, 政治権力
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2023 年 88 巻 2 号 p. 264-286

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抄録

本稿は、東南アジア大陸部と日本を対象とした文化人類学や歴史学などの異なる学問分野による「山地社会」研究を相互参照しながら、景観・生業・政治権力の相関のなかで「山地-平地」の関係理解を目指すものである。具体的には、四国山地東部の近世木頭村(現・徳島県那賀郡那賀町)における山里景観の歴史的形成プロセスとその変容過程について、村内の社会関係とそれに基づく山の用益関係を中心としながら、政治権力、植生の攪乱、そして流通という諸要素とのせめぎあいのなかで、歴史的かつ動態的に解明する。近世日本における焼畑を伴うパッチ状の山里景観は、幕藩体制下での検地や年貢、それに対応した土地利用に関する親族および社会制度や、焼畑休閑地での作物の産物化、そして流通といった、内外の他の景観構成要素との絡まり合いのなかで生成していた。それは幕府や藩による支配が山里を特殊な地域として扱ってきたことや、焼畑耕作地での産物化が近世都市の需要に応える形で展開したことによる。このように近世期における景観生成を明らかにすることを通じて、過去の山里景観の動態に関わる幅広いアクターを捉えることが可能となる。

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2023 日本文化人類学会
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