抄録
本研究は,複合的な因果関係,相互連関の双方からなる高次な認識としての関係的認識の習得が可能となる中学校社会科歴史授業の授業構成論と授業モデルを提案し,断片的な知識による,断定的な認識に陥りやすい歴史学習を改善する方法を示したものである。開発した小単元「『縄文』から『弥生』の変化を探る」では,「弥生時代の始まりとともに稲作は開始され,人口は増加した」という断定的認識を問い直す実践を行い,分析を試みた。その結果,1)既習事項・既有知識を見直す新たな視点の提示が,既有知識のモニタリング,新たな解釈や説明を行うにあたって有効であること,2)複数の資料による事例を提示し,諸原因,相互連関の検討を行うことで,関係的認識の習得が可能となることが明らかとなった。