抄録
本研究は,熟練教師のストレスの特徴とその要因を把握すること,熟練教師のストレスとバーンアウトおよびコーピングとの関係をストレスの予防的視点から検討を試みることが目的である。教職経験25 年以上の熟練教師151 名を対象に,ストレスについての質問紙調査を行った。その結果,熟練教師のストレスの特徴は「停滞感」「自己不全感」「余裕のなさ」「コンピュータの苦手感」に集約された。これらのストレスへは「性別」「配偶者の有無」「“ しんどい” と思う校務分掌の有無」「管理職志望の有無」がストレス要因となる可能性が示された。また,総じて熟練教師のストレスは,バーンアウトを生起させる可能性を配慮しなければならないことが示唆された。しかし,「達成感の後退」において, 男性教師は「自己不全感」を,女性教師は「余裕のなさ」をバーンアウト要因とはせず,バーンアウトにならないように働いていることが推察された。さらに,コーピングでは『対人依存型コーピング』『嗜好依存型コーピング』が熟練教師のストレス抑制に有効であること,それに対し「認知操作型コーピング」は,時にストレス促進に作用することが示唆された。以上から中学校熟練教師のストレスへの予防の方策について検討した。