抄録
本調査では,海外で子育てを行う保護者に対する日本からの効果的な支援を構築する前段階の探索的な研究として,海外における子育ての現状と課題に加え,海外に存在するメンタルヘルス資源について捉えることを目的とする。海外に滞在もしくは滞在経験を持つ母親3 名にインタビュー調査を行い,質的データ分析法を用いて分析を行った。その結果,海外,日本人学校,母親コミュニティ,帰国,母親の5 つのテーマが得られた。海外にあるメンタルヘルスにおける内的・外的資源を整理,検討した上で,保護者が海外で生活する中で生じる,見通しの持てなさ,喪失の体験,脆弱で閉鎖的なコミュニティといった課題が見出された。海外において相談資源が限られている中で,日本からの支援に関しては,現地にある内的・外的資源を高めることを念頭に置くとともに,継続的な関わりや学校と保護者を繋げる支援の必要性が示唆された。