抄録
本研究の目的は,保育者と子どもの信頼関係について,保育者自身の意識に着目し,保育者の行為や,信頼感を実感している時の子どもの姿を通して検討するものである。そのために, 質問紙調査法によって保育経験のある115 名のデータの分析を行った。第一に,「保育者の子どもへの関わり行動尺度」を用いて検討した結果,「親和的関わり」因子と「把握的関わり」因子の2 つの因子による子どもへの関わりが行われていた。「親和的関わり」は,多くの保育者が実践している関わりである一方,子どもの内面を理解して関わる「把握的関わり」については,保育所の初任者の得点が低いことが明らかになった。そして,第二に,信頼感を実感している時の子どもの姿について,保育者の自由記述から8 つの大カテゴリ「好意」「接近態度( 行動)」「接近態度( 言葉)」「安心」「表情」「成長」「受容態度」「保護者情報」にまとめた。過半数以上の保育者は,保育者に関わろうとする子どもの姿によって,保育者に対する子どもからの信頼感を実感していることが明らかになった。