応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
養育者の内省機能促進プログラムの開発とその量的検討
今里 有紀子
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2021 年 37 巻 2 号 p. 73-85

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抄録
養育者の内省機能(reflective functioning)の向上は,子どもと養育者自身の精神的安定に関与する。本研究では,Parents First (Slade, 2006) を参考に,独自の養育者の内省機能促進プログラムを開発して,その効果を検討した。またプログラムを通して「養育内省機能」と「育児感情」「養育態度」「子育てレジリエンス」「育児に対する自己効力感」の変化と関連についても検討した。1歳から4 歳児の母親6 名を対象に,1 回90 分,4 回(講義とグループワーク)からなるプログラムを実施し,その前後に質問紙調査を行った。その結果プログラムを通して養育者の「内省の失敗」「子どもの態度・行為への負担感」「育て方への不安感」が低減し,一定の肯定的な効果を確認することができた。一方で「ペアレンタル・スキル」「ソーシャルサポート」が高い養育者は,子どもへの「試行錯誤的な理解」や「内省の失敗」を減少させることができ,加えて「育て方への不安感」が低く「応答性」の高い養育者は,子どもへの「確信的な理解」の向上に影響することが明らかにされた。以上の結果を踏まえ,今後のプログラムの改善に向けて議論がなされた。
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© 2021 日本応用教育心理学会
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