抄録
本研究では,通信制高校卒業生の適応感に及ぼす要因を検討することを目的として,通信制高校の付属機関であるサポート校の利用頻度,卒業後の進路,学校に対する評価について分析を行った。通信制高校の卒業生を対象に自己記入式アンケートを郵送し,返送があった者のうち有効な回答を得た71 名( 男子39 名,女子32 名) を分析対象とした。その結果,友人関係を構築し集団活動の場であるサポート校の利用頻度と適応感に関連は見られなかった。卒業後の進路によっては適応感に部分的に影響していた。また,学校に対する評価として友人関係や集団活動について肯定的な評価をした卒業生の適応感が高いことが明らかとなった。適応感に及ぼす影響としてはサポート校の利用頻度ではなく,対人交流の体験を肯定的に捉えたことが関連しており,不適応を経験した生徒の回復を丁寧に促す取り組みの重要性が示唆された。さらに,今後のサポート校の在り方も含めて議論した。