応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
38 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 吉田 満穗, 田中 修敬, 西山 修
    2022 年 38 巻 2 号 p. 3-16
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者の自伝的記憶としての気付き体験を活かすよう働き掛け,保育実践への効力感を高める支援プログラムを開発し,その効果を検証することである。𠮷田・西山(2017)により,保育実践の中で自ら気付き,記憶された気付き体験を持つ保育者は,効力感が高いことが実証されている。そこで,支援プログラムにより,自らの保育エピソードを振り返り,新たな枠組みでそれを捉え直し,自伝的記憶として気付き体験を保持することが,保育者効力感を高めるか検討した。その結果,保育者効力感は,研修前と比較して,フォローアップ後及び追跡において有意に上昇した。また,フォローアップ後と1か月後の追跡との間に有意な差はなく,支援プログラムの持続効果が確認された。さらに,他の関連変数にも同様の効果が認められ,その有効性が裏付けられた。最後に,本研究の成果を踏まえ,保育者支援の観点から,若干の考察と今後の課題を述べた。
  • 蔵岡 智子, 澤谷 拓哉, 向井 秀文
    2022 年 38 巻 2 号 p. 17-28
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,通信制高校卒業生の適応感に及ぼす要因を検討することを目的として,通信制高校の付属機関であるサポート校の利用頻度,卒業後の進路,学校に対する評価について分析を行った。通信制高校の卒業生を対象に自己記入式アンケートを郵送し,返送があった者のうち有効な回答を得た71 名( 男子39 名,女子32 名) を分析対象とした。その結果,友人関係を構築し集団活動の場であるサポート校の利用頻度と適応感に関連は見られなかった。卒業後の進路によっては適応感に部分的に影響していた。また,学校に対する評価として友人関係や集団活動について肯定的な評価をした卒業生の適応感が高いことが明らかとなった。適応感に及ぼす影響としてはサポート校の利用頻度ではなく,対人交流の体験を肯定的に捉えたことが関連しており,不適応を経験した生徒の回復を丁寧に促す取り組みの重要性が示唆された。さらに,今後のサポート校の在り方も含めて議論した。
  • 若田 美香, 田中 修敬, 秀 真一郎
    2022 年 38 巻 2 号 p. 29-45
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー
    本論では,子どもの人と関わる力を育む保育者の専門性として保育者の協働性に着目した。具体的には,保育実践の内在的基盤である効力感の向上に繋がった,協働性に関わるエピソードを広く自由記述にて収集した。そして,これからの保育者に必要な支援の内実を主にSCAT により質的に分析した。その結果,1)協働性を基盤にした【心を支える支援】や【保育力の向上を支える支援】といった『個別的支援』と,協働的な保育の楽しさや集団の高まりを実感できるような『集団的支援』が共に必要であること,2)効力感を高めるための支援者側の意識としては,「個の尊重」「導き」「協働」を挙げることができ,個と集団とを生かし補い合える支援が必要であること,が明らかになった。最後に,「支援者との関係性」と「支援の認知」の視点から,今後の展開の可能性を述べた。
  • 福谷 泰斗, 皆川 直凡
    2022 年 38 巻 2 号 p. 47-60
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,自己調整学習の理論に基づいて,まとめと学習活動の振り返りを記録するポートフォリオを中学校社会科授業の中でプログラムし,その成果を自己決定理論と関連づけて検討することを目的として行われた。そのため,まず,社会科を学ぶ理由について,生徒の自由記述をもとにして社会科学習動機づけ尺度を作成し,因子分析を経て標準化された尺度として完成させた。次に,社会科(歴史的分野)において学習者自身が既有知識と学習内容を関連づけながら記述するポートフォリオを導入した授業実践を行い,社会科学習動機づけ尺度を用いてその教育効果を検証した。その結果,内的調整,同一化的調整という2 つの自律的な学習の動機づけが向上し,他律的な学習の動機づけである取り入れ的調整が抑制されるという成果が得られた。
  • 勝見 慶子, 田村 隆宏, 藤村 裕一
    2022 年 38 巻 2 号 p. 61-75
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2022/04/25
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,ICT を含む多くのメディアを利用し始める幼児期に注目し,幼児に情報メディアの理解が可能であるのか,また可能であった場合に,何歳から可能であるかを明らかにすることであった。調査対象者は,認定こども園の3~5歳児228 人であった。幼児を情報や情報メディアに関する事前指導有りと無しの2群に分け,調査を行った結果,幼児の情報メディア理解は保育者の情報や情報メディアに関する理解を促す指導により,いずれの年齢においても促されることが示されたが,特に4歳児と5歳児である程度明確に理解されることが明らかにされた。また,約1ヶ月後に実施した実験群の4・5歳児を対象とした遅延調査において,いずれの年齢においても指導効果の持続が確認できた。
feedback
Top