抄録
日本の教師の精神的健康はここ数年の間,悪化している。本研究では,教師の精神的健康の維持には,管理職や同僚とのかかわりが影響していることを踏まえたうえで,教師が精神的健康を維持・促進するための他者とのかかわりのあり方について,より実際的な支援を提供する自己–自己対象体験の質を明細に捉える自己心理学(Kohut,1971, 1977)を用いた支援の在り方を検討することを目的とする。3名の教師に困難な状況を乗り越え成長していく過程についてのインタビュー調査を行い,質的データ分析法を用いて分析を行った。SCAT(Steps for Coding and Theorization)により,得られた結果に基づき,自己-自己対象体験の視点から,困難な状況において他者とのかかわりをどのように捉えたのかを考察し,管理職や同僚とのかかわりによる教師の精神的健康を維持するための具体的な支援と,教師の自己の健康な成長の過程について明らかにした。