2020 年 7 巻 1 号 p. 11-16
在宅医療は終末期の患者にとって住み慣れた自宅で家族とともに最期を迎えることができる反面,死への恐怖や将来の不安を感じ,不眠,抑うつ,せん妄など,精神症状が出現することがある.家族にとっても24 時間の看護や介護を行うことは,身体的,精神的に苦痛を感じる.緩和ケアにおける精神的苦痛について,個人の感じ方が異なるため,薬剤師は患者や家族とコミュニケーションを十分に取り,話を聞くことが重要である.また,患者や家族の精神的苦痛をケアするためには,精神症状に対する薬物療法等に目を向ける必要があり,処方される薬剤の服薬が患者にとって苦痛にならないように,患者や家族に精神症状を確認し服薬指導を行う.病院においては,患者や家族の精神的苦痛を緩和するために,精神科医,看護師,薬剤師等多職種による精神科リエゾンチームが構成されている.患者や家族が在宅医療を負担に感じないようにするためには,地域においても地域包括ケアシステムにおける多職種連携によって,緩和ケアにおける身体的苦痛の緩和だけでなく,精神的苦痛の緩和が重要になる.このためには,患者や家族から信頼される薬剤師であることが苦痛の緩和につながると考える.