在宅薬学
Online ISSN : 2434-5288
Print ISSN : 2188-658X
7 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 神谷 政幸
    2020 年 7 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

    一般社団法人日本在宅薬学会では,年に1 回学術大会を開催している.それは医療に従事するさまざまな職種の方々が共に集い,情報共有を行う学びの場である.実行委員長という立場で第12 回日本在宅薬学会学術大会を担当するにあたり,最も重要なことは大会テーマであると考えて「地域包括ケア時代の『在宅薬学』~その行動で目の前の地域医療が変わる~」に決定した.そのうえで,学術大会を有意義なものとするためには,よい内容と一定数以上の参加者数が必要と考え,実行委員の協力によりプログラムを選定した.そして,「選択と集中」を意識した告知活動を行った.その過程には,第12 回学術大会実行委員長としての方向性や実行委員会運営に関するさまざまな意図が込められている.これらの内容が今後学術大会運営等を担う人たちの参考になり,さらには第12 回学術大会に込められていた狙いを再確認してもらうことで,参加してくださった方々がそれぞれの地域で一歩を踏み出し,地域医療をさらに一歩でもよくするきっかけになることを心から願っている.

  • 成井 繁, 野澤(石井) 玲子, 三田 充男
    2020 年 7 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

    在宅医療は終末期の患者にとって住み慣れた自宅で家族とともに最期を迎えることができる反面,死への恐怖や将来の不安を感じ,不眠,抑うつ,せん妄など,精神症状が出現することがある.家族にとっても24 時間の看護や介護を行うことは,身体的,精神的に苦痛を感じる.緩和ケアにおける精神的苦痛について,個人の感じ方が異なるため,薬剤師は患者や家族とコミュニケーションを十分に取り,話を聞くことが重要である.また,患者や家族の精神的苦痛をケアするためには,精神症状に対する薬物療法等に目を向ける必要があり,処方される薬剤の服薬が患者にとって苦痛にならないように,患者や家族に精神症状を確認し服薬指導を行う.病院においては,患者や家族の精神的苦痛を緩和するために,精神科医,看護師,薬剤師等多職種による精神科リエゾンチームが構成されている.患者や家族が在宅医療を負担に感じないようにするためには,地域においても地域包括ケアシステムにおける多職種連携によって,緩和ケアにおける身体的苦痛の緩和だけでなく,精神的苦痛の緩和が重要になる.このためには,患者や家族から信頼される薬剤師であることが苦痛の緩和につながると考える.

  • 前原 理佳, 吉野 奈美, 後藤 聖子, 赤嶺 美樹, 吉田 友美, 豊田 珠里, 阿南 祐衣, 大野 陽子, 添田 悠希, 竹中 夕奈, ...
    2020 年 7 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    ジャーナル フリー

    地域包括ケアシステムの構築が急がれる中,薬局薬剤師の責務は広く深く重要である.その職能を十分に生かすことが今後迎える医療情勢の変化に必要不可欠であると考える.そのためには薬剤師の十分な気力体力が必要であり,それには機械化・ICT 化は不可欠であり,さらにパートナーという新しい医療資源の役割が重要となる.0402 通知を踏まえてパートナー業務の手順書,研修制度の構築,さらにパートナーの医療人としての育成成長を図ることで,薬剤師の職能が最大限に発揮できると考える.患者の薬物療法を支援するために必要な薬局薬剤師の取り組みとして,服用期間中の継続的な薬学的管理と患者支援が義務となり,医師への服薬状況に関する情報提供が努力義務となる.ますますパートナー制度の確立と薬剤師自らが希望している職能が最大限発揮できるやりがいのある,よい時代になると考える.

原著
  • 海野 茜, 鈴木 学, 上田 祐稀乃, 小林 篤史, 甲斐 絢子, 生木 庸寛, 小原 道子, 味澤 香苗, 林 由依, 林 秀樹, 棚瀬 ...
    2020 年 7 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    [早期公開] 公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    岐阜薬科大学は岐阜県薬剤師会と共同で実施しているPharmaceutical Intervention Record(PIR)事業を利用して,在宅医療患者に対する処方監査の特徴について分析した.2018 年度にPIR データベースへ入力された1,546 処方を,在宅医療患者への処方(在宅群)とそれ以外の処方(対照群)に分けた.在宅群は対照群と比較して高齢者の割合,女性の割合,6 剤以上投与されている割合が有意に高かった.また,在宅群に対する処方監査の特徴として,疑義照会の情報源では医師や看護師等からの相談,患者・患家の様子,持参薬チェック,および検査結果,疑義照会の原因では腎機能低下等の状況,および重大な副作用,疑義照会の結果では剤形変更の割合が対照群と比較して有意に高かった.このことから,薬剤師は在宅医療において,患者・家族とのコミュニケーションや信頼関係と多職種連携を活用して情報収集を行い,患者のバイタルサイン,服薬状況に応じた処方監査を行っていることが示唆された.

  • 安里 芳人, 筒井 大輔, 杉田 康, 上野 隼平, 橋本 倫季, 天羽 惠佑, 上田 一志, 中崎 正太郎, 狭間 研至
    2020 年 7 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    [早期公開] 公開日: 2020/03/24
    ジャーナル フリー

    2018 年度調剤報酬改定では,ポリファーマシー対策における薬剤師業務の評価を目的に服用薬剤調整支援料(以下,本支援料)が新設された.今回,当薬局にて本支援料を算定した123 名を対象に患者背景,減薬理由,薬効別内訳や薬剤師の経験年数などを解析するとともに,推定削減額と本支援料の関連を検証した.1 人当たりの薬剤数は,9.0 剤から6.0 剤に減少していた.うち,薬剤師の提案による減薬が274 剤(87.3%)を占めており,中止となった薬剤には消化器用剤と解熱鎮痛消炎剤の併用が多かった.服用薬剤数は80 歳から84 歳以下の10.7 剤がピークであったが,年齢と減薬数には大きな差はみられなかった.190 剤(69.3%)が漫然投与の改善であった.123 名で算定した本支援料は,延べ133 回166,250円であった.一方,本算定要件となる28 日間で薬剤費は461,680 円の削減となった.また,薬剤師の経験年数と本算定には関係性は認められなかった.薬剤師による服用後のフォローと薬学的見地からのアセスメント,医師へのフィードバックを基本サイクルとして,患者個々において薬剤師が医師や他の医療従事者と連携する環境を整えることは,服用薬剤数を減少させ,ポリファーマシーの改善に寄与するとともに,医療費の適正化にも貢献すると思われた.

ノート
  • 辻井 聡容, 大垣 孝文, 中永 かおり, 今井 清隆, 木瀬 大輔, 森山 雅弘, 中嶋 正博
    2019 年 7 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/04/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    公立豊岡病院(当院)の薬剤師が行う訪問薬剤管理指導業務の薬学的介入内容を解析し,その有用性について検討した.2011 年4 月から2016 年3 月までの間に,当院で在宅指導を行った患者65 例を対象に,在宅指導の依頼内容,処方提案内容,効果および有害事象について調査した.介入依頼は,がんによる症状緩和の依頼が43 例(66.1%)と最も多く,終末期がん患者の在宅療養を支援するケースが最も多かった.病院内の専門医やチームと連携して対応しているケースも確認された.処方提案の延べ件数は429 例であり,それらの340 例(79.3%)が処方に反映されていた.薬学的介入の内訳は,医療用麻薬の処方設計支援が117 例(27.3%)と最も多く,ついでオピオイド薬以外の症状緩和薬の提案が92 例(21.4%)であり,在宅緩和ケアを支援するために介入したケースが大半であった.薬剤師の介入により身体症状が改善した症例は32 例(49.2%)であった.病院薬剤師が行う在宅指導は,院内チームとのスムーズな連携により迅速かつ詳細な薬学的アセスメントが可能であり,Quality-of-Life(QOL)を改善することが示唆された.

  • 小林 篤史, 甲斐 絢子, 林 秀樹, 森山 文則, 渡辺 康介, 杉山 正
    2020 年 7 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    [早期公開] 公開日: 2020/02/18
    ジャーナル フリー

    在宅医療の分野で活躍できる薬剤師の養成を目指して,薬学生を対象とした多職種が指導者の在宅医療研修プログラムを開発した.研修は在宅医療に関する医療施設,介護施設を備えた診療所で実施した.研修期間は2 週間とし,研修方法は薬学生が多職種と在宅医療の現場に同行するon-the-job training とした.10 名の薬学生が研修に参加し,すべての研修では医師同行,看護師同行,薬剤師同行を体験し,医療現場では,理学療法士,保健師,ヘルパー,作業療法士等の他職種の業務に立ち会うことができた.研修場所は,患者自宅,在宅関連施設,訪問看護ステーションなど在宅医療に係わるさまざまな施設であった.薬学生が興味を持った研修は,医師同行,看護師同行,薬剤師同行,理学療法士同行などの多職種との同行,看取り,退院前カンファランス,症例カンファランスが高い割合を占めた.研修後のレポートでは,在宅医療のキーワードに生活,信頼関係,多職種連携,他職種の役割,専門性の発揮,情報共有,死が抽出された.研修に対する研修生の満足度,理解度は高く,本プログラムは有用であると評価された.

症例報告
  • 谷口 明展, 香川 大輔, 浦邉 啓太, 賀嶋 直隆, 永井 由佳, 西村 由美
    2020 年 7 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/25
    [早期公開] 公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

    超高齢化社会となり,認知症高齢者数も増加している.認知症患者の服薬管理は困難を要することがあり,MMSE のスコアによっては適切な服薬支援でないと服薬できないことも多くあるためMMSE を活用した薬剤師による在宅服薬支援によって服用率が改善した3 症例を報告する.症例1 では,MMSE 26点でありお薬カレンダーによる自己管理と,ヘルパーによる声掛けによる在宅服薬支援の結果,服用率が7%向上した.症例2 では,MMSE 21 点でありお薬カレンダーと家族による電話による服薬刺激,薬剤師とヘルパーによる配薬と声掛けという服薬支援により服用率が4.8%向上した.症例3 では,MMSE 23 点であり,ヘルパー協力のもとお薬カレンダー利用により服用率が2.3%向上した,薬剤師により在宅の認知症患者への服薬支援最適化のためMMSE を活用することは服用率改善に効果が期待できると考えられる.

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