在宅薬学
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最新号
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巻頭言
総説
  • 神谷 政幸
    原稿種別: 総説
    2023 年 10 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:薬価基準には,2つの性格がある.1つが医療保険において使用できる医薬品の品目表としての性格,そしてもう1つがその医薬品の価格表としての性格である.我が国では国民医療費の総額は伸び続けており,その中で薬剤比率は22%前後で推移している.そのため,常に医療保険制度と財源を議論する際に,医薬品の価格に関する問題がついてまわることになる.2016年の秋から2017年末にかけて検討が行われた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」においては,“「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し,国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から,薬価制度の抜本改革に向け,PDCAを重視しつつ,以下のとおり取り組む”と記載されており,今後も引き続きの議論がされていくことになる.海外各国の薬価制度も参考にしながら,日本の医療保険制度に即しつつ医薬品提供体制を確保した薬価制度を検討していかなければならない.

研究室紹介
  • フィジカルアセスメントスキルから蛋白結合置換術まで
    徳永 仁
    原稿種別: 研究室紹介
    2023 年 10 巻 1 号 p. 9-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:私が病院薬剤師として働いていた時に常に感じていたことは,薬剤師の技術不足である.その当時,病棟カンファレンスに参加した際に頻繁に目にするバイタルサインや患者所見の写真が全く理解できなかった.よって,医療人にとっての共通言語であるバイタルサインが読める技術指導が薬剤師にとって必要であると考えるようになった.大学教員となり,2006年に文部科学省が進める“地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム(医療人GP)”に申請し採択され,本学髙村徳人教授とともにバイタルサインが読める薬剤師を育成する教育システムの構築に力を注ぐことができるようになった.これらの教育システムは,薬剤師として薬物治療に貢献できる基本的なフィジカルアセスメントスキルから,血清蛋白と薬物との蛋白結合置換術までをも含むものである.本稿では,本学での患者シミュレータを使用した薬学生対象のベッドサイド実習,薬剤師のためのフィジカルアセスメント研修会,先進的客観的臨床能力試験(アドバンストOSCE)やeラーニング教材の作成などの取り組みを例に,臨床薬学シミュレーション教育の現状について紹介したい.

原著
  • 〜在宅医療・福祉コンソーシアム長崎での調査結果による考察〜
    手嶋 無限, 竹嶋 順平, 西田 考洋, 坂本 仁美, 吉原 律子, 松本 幸子, 岩下 淳二, 榊原 隆三, 松坂 誠應, 星野 由雅, ...
    原稿種別: 原著
    2023 年 10 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:多職種協働によるがん医療・緩和ケアを担う専門人材育成に向けた学生教育を提供する上での課題についてアンケート調査を実施し,回答結果をもとに集計・解析した.回答は大学教員101名,医療専門職139名,介護専門職14名,福祉専門職20名,行政関係者48名および介護支援専門員27名の計349名から得られた.多職種協働チームの一員としての「役割」および「チームプレー」の自己評価スコアについて,介護福祉士は有意に高く,歯科医師は低い傾向が確認された.多職種協働の実践ができる人材育成において,大学教員には「教育力」,医療・介護・福祉専門職には「現場力」,行政関係者には「調整力」,情報通信技術分野には「連携力」が学生教育の観点から期待されていた.これから先の取組では,「大学外の地域での参加型学習の機会を増やすこと」が最も多く求められていた.がん医療・緩和ケアを担う専門人材育成は,大学・行政および医療・介護・福祉専門職などの多職種・多分野での連携教育が必要であることが示唆された.

  • 全国規模のインターネット調査に基づいて
    加茂 薫, 大庭 哲治
    原稿種別: 原著
    2023 年 10 巻 1 号 p. 41-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:本論文は,日本政府・厚生労働省が検討している調剤の外部委託化解禁とそれに伴う対人業務強化について,薬局現場で勤務している薬剤師の受容意識を明らかにすることを目的に,インターネットによる全国規模の意識調査を実施した.具体的には,勤務先薬局の規模・場所のほか,性別・年齢・臨床経験・雇用形態・1日の患者接触時間等を基本属性情報として尋ねると共に,厚生労働省ワーキンググループの会議資料1)を提示した上で,外部委託化解禁の是非,懸念点,外部委託化解禁により捻出される時間の活用方法,かかりつけ薬剤師や在宅医療等の対人業務への関与に対する意識について尋ねた.その結果,薬剤師より得られた1,069件の回答サンプルを分析したところ,外部委託化解禁に対する受容意識として,賛成・やや賛成の回答が524件であり,反対・やや反対の回答175件を大きく上回っていることを明らかにした.これは,日本政府・厚生労働省が意図している対人業務強化につながる可能性が高いことを示唆しているが,一方で,どちらともいえないの回答も370件あり,政策に対する内容の不明確さや薬剤師の理解の不十分さが課題であることも浮き彫りにした.

症例報告
  • 楢山 恭弘, 谷 秀彰, 三浦 裕幸, 針生 寛之, 唯野 貢司
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 10 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:80歳代男性.医師よりPT-INR3.5に延長のため,直接経口抗凝固薬(Direct oral anticoagulant; DOAC)への変更を視野にワルファリン中止指示あり.14日前からラノコナゾールクリーム1%が処方となっていたことから同剤によるCYP2C9阻害によるワルファリンの作用増強を疑った.医師にワルファリンとイミダゾール系抗真菌外用薬の併用によるPT-INR延長の事例について情報提供を行ったところ,ラノコナゾールクリーム1%は使用中止となった.次回の医師の訪問診療日までワルファリン休薬後,PT-INRを確認の上でワルファリン再開予定と報告あり.後日,ワルファリンの適当な休薬期間について医師に情報提供を行ったところ,同日中にワルファリン再開指示あり.その後PT-INRは適正域を推移しており,延長は認められていないことを確認した.本症例では医師の指示の元で随時在宅訪問を行い,必要な情報提供を行うことで適切な薬物治療提供の一助となることができたと考えられる.

  • 古澤 ひかり, 宮坂 善之, 橋村 恵子, 髙橋 祐美
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 10 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:近年,在宅医療のニーズは益々高まっており最期は自宅で迎えたいという要望も高い.今回,在宅看取りを希望されて終末期管理を行う中で,医療用麻薬の使用に関する問題としてケミカルコーピングが疑われた症例を経験した.患者は在宅で過ごす中で,夜間の不安と不眠による精神的苦痛に対してオキシコドン塩酸塩散を服用していたが,多職種の情報共有と薬学的介入により対処方法を検討して重篤な副作用を回避した.ケミカルコーピングは乱用や依存の前段階として考えていくことが重要であるが,報告は少なく見過ごしている可能性もある.在宅医療では身近に医療従事者が常にいる訳ではないため,不安も大きく気持ちの拠り所としてケミカルコーピングに陥る可能性が高いかもしれない.したがって,終末期在宅医療において患者や家族が安心して過ごせるよう,それぞれの職種の視点で連携して対応していくことが重要である.

事例プラザ
他職種連携
  • 渡邉 仁史
    原稿種別: 多職種連携
    2023 年 10 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル オープンアクセス

    要旨:2025年問題を直前に迎える昨今,次世代への多職種連携が求められている.一般的な口腔内疾患であるう蝕,歯周病に加え,口腔カンジダ症は常在微生物による口腔内の内因感染症である.在宅歯科診療の基本である口腔ケアは多職種で介入でき,これら口腔内疾患を早期発見するための情報交換が必要となる.基礎疾患を持つ者において大きな問題になるのは摂食嚥下障害であり,中でも薬剤性の嚥下障害を疑う力が必要になる.そのために主治医の同意のもと歯科医師が多職種とともに介入し,口腔内の様々な情報を共有すべきである.歯科訪問診療では外来と同じ高度な治療は再現困難である中,歯科医師は患者の情報を得るために「お薬手帳」を最も活用する.薬剤師に求めることは服用薬と,注射薬として投与されるビスホスホネート製剤に関する正確な情報である.また口腔内の問題が患者のACP(Advance Care Planning)の障害になってはいけない.ACPを考える初期段階で歯科介入の方針を決め,多職種から問題点を抽出,解決しておくべきである.

海外の薬局・薬学事情
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