抄録
盲ろう者とその家族のコミュニケーションにおける対処行動の「適切さ」を理解するための実証的資料を得るために,10組の盲ろう者とその家族に面接調査を行った.本人と家族とのコミュニケーションにおいてどのような困難が起こっているか,その困難にどのように対処しているかについて,本人と家族の認識を聴取し,全発言をKJ法により分析した.コミュニケーション上の困難には,正確に情報を伝達できるかどうかに関する「意味内容の伝達」と,場にふさわしい発言や態度で主体的に参加できるかどうかに関する「社会的場面への参加」の2つの側面があった.本人と家族の認識では,「意味内容の伝達」の困難よりも,「社会的場面への参加」の困難が顕著であった.本人と家族にとっての対処行動の「適切さ」には,「社会的場面への参加」の側面が重要であることが示唆された.