2001 年 39 巻 1 号 p. 1-14
Gottfredson & Hirschiは,1990年に,「犯罪の基礎理論」において,自己統制という概念を提唱した.その後,多くの研究者が,犯罪行為と自己統制能力の低さとの関連性を実証してきたが,これらの研究に用いられている手法には,いくつかの問題点が指摘できる.そこで本研究では,それらの問題点をできるだけ解消するため,犯罪者を対象とし,犯罪進度や家庭環境といった,低自己統制が形成される客観的要因も含めた検討をおこなう.
その結果,以下のことが指摘された.
(1)20歳までの警察補導などの経験は,犯罪進度を示す重要な指標の1つとなりうる.
(2)実父の欠損は,子どもが犯罪を行なうか否かに大きな影響を及ぼす.
(3)一般的に不適切と思われる行動の多い親によって,不安定な家庭環境の中で育てられると,自己統制能力が低くなる可能性が強まる.