Gottfredson & Hirschiは,1990年に,「犯罪の基礎理論」において,自己統制という概念を提唱した.その後,多くの研究者が,犯罪行為と自己統制能力の低さとの関連性を実証してきたが,これらの研究に用いられている手法には,いくつかの問題点が指摘できる.そこで本研究では,それらの問題点をできるだけ解消するため,犯罪者を対象とし,犯罪進度や家庭環境といった,低自己統制が形成される客観的要因も含めた検討をおこなう.
その結果,以下のことが指摘された.
(1)20歳までの警察補導などの経験は,犯罪進度を示す重要な指標の1つとなりうる.
(2)実父の欠損は,子どもが犯罪を行なうか否かに大きな影響を及ぼす.
(3)一般的に不適切と思われる行動の多い親によって,不安定な家庭環境の中で育てられると,自己統制能力が低くなる可能性が強まる.
本研究の目的は,日本の虚偽検出検査で広く用いられているGuilty knowledge test(GKT)の妥当性を評価することである.現実の犯罪捜査で実施された271例の実務検査事例から,GKT質問表のサンプル1146例が収集された.
各サンプルは,具体的な質問内容,質問に対する反応に関しての検査者の判定,質問の主題となった項目について被検査者の記憶内容の記述から構成されていた.
92.6%のサンプルで,被検者は項目を実際に記憶していた.犯行日時と検査日時との間隔の長さと,項目記憶の有無とには,関連が認められなかった.項目が実際に記憶されていた1032サンプルのうち906サンプルで,顕著な反応が検査者によって認められていた(hit率87.8%).一方,項目が記憶されていなかった105サンプルのうち68サンプルで,曖昧な反応しか認められていないか,あるいは全く反応が認められていなかった(correct rejection率64.8%).内容による質問表の分類の結果,「数」と「行為」に関する質問は他の種類の質問よりもhit率が低かった.また,「行為」や「日時」に関する質問は他の質問よりもややcorrect rejection率が低いように見受けられた.さらに,探索質問法は,特にcorrect rejection率において,裁決質問法に劣ることが示された.
本研究の結果は,検査者による質問事項の選択が適切であり,日本において実施されているGKTは満足すべき妥当性を有していることを示している.また,被検査者の生理反応は,項目の再認にのみ起因するものではないことが示唆される.