犯罪心理学研究
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原著
累犯刑務所におけるマインドフルネス方略と目標設定に焦点をあてた集団認知行動療法プログラムが覚せい剤再使用リスクの高い累犯受刑者に及ぼす影響
野村 和孝安部 尚子嶋田 洋徳
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2016 年 54 巻 1 号 p. 13-29

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抄録

本研究の目的は,累犯刑務所におけるマインドフルネス方略と目標設定に焦点をあてた集団認知行動療法(MGF)に基づく薬物依存離脱指導への参加が,覚せい剤使用者の再使用リスクに及ぼす影響について検討することであった。本研究では,累犯刑務所に服役しており,薬物依存離脱指導の対象となった者56名を対象に,MGFプログラムと野村ほか(2014)の開発した集団認知行動療法プログラム(TAU)の2つのプログラムのいずれかを実施し,プログラム実施前後に刑事施設における薬物依存症者用評価尺度(山本ほか,2011; C-SRRS)への回答を求めた。MGFプログラムでは,TAUにおけるコーピング方略の検討部分をマインドフルネス方略と目標設定の検討に変更したプログラムを実施した。分析対象となったMGF群の12名とTAU群の13名を比較した結果,MGF群のみ薬物依存離脱指導の実施前後において「情動・意欲面の問題」の因子得点の減少が有意であったことが確認され,また「再使用への欲求」,「薬理効果への期待」,「薬物使用への衝動性」,および「薬害・犯罪性の否定」の4つの因子得点が両群ともに減少が有意であったことが確認された。さらに,薬物依存離脱指導の前後におけるC-SRRSの下位因子得点の変化量と属性項目の関連性を検討した結果,両群ともに入所回数が少ない者ほど「薬害・犯罪性の否定」因子の改善がなされていることが示された。これらのことから,マインドフルネス方略と目標設定に焦点をあてることによって「情動・意欲面の問題」因子の改善を促進することが明らかとなった。一方で,入所回数の多い者に対しては,「薬害・犯罪性の否定」因子の改善効果を高めるための手続きをさらに検討する必要が示唆された。

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© 2016 日本犯罪心理学会
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