日本外科系連合学会誌
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症例報告
胸腺癌肝転移の1切除例
合川 公康宮澤 光男田渕 悟石井 利昌岡田 克也岡本 光順小山 勇二反田 博之金子 公一
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2009 年 34 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

 症例は40歳,男性.2006年11月,胸腺腫瘍に対し,拡大胸腺摘出術を施行された.摘出腫瘍は,当初WHO分類Type B3,正岡の病期stage IIの胸腺腫と診断されていた.2007年11月経過観察のための全身検索を施行し,肝S1に,径3cm大の腫瘤を認め,胸腺腫由来の転移性肝腫瘍と診断した.肝S1と術中エコーで認められたS6の2カ所に対して,肝部分切除を行った.病理学的に,以前摘出した腫瘍と類似していたが,臨床経過を考慮すると,胸腺癌の診断が妥当と考えられ,訂正された.3カ月後のCTで多発肝転移を認め,全身化学療法を施行し経過観察中である.胸腺癌を含めた胸腺上皮性腫瘍の再発形式は,局所または胸腔内再発が主で,血行性転移は少ないとされているが,血行性転移のうち肝転移は肺と同等もしくは多いとの報告もあり注意を要する.胸腺癌肝転移の報告は少なく,切除の適応に関しては,今後症例を集積し検討が必要である.

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© 2009 日本外科系連合学会
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