2009 年 34 巻 1 号 p. 42-45
症例は59歳,女性.近医にて貧血加療中,胃噴門部に腫瘤を指摘され当科に紹介された.上部消化管内視鏡検査にて,食道下端から胃内に懸垂する表面が小結節状の黒色亜有茎性腫瘍で,生検で悪性黒色腫と診断された.手術は右開胸開腹胸部食道亜全摘,胸腔内胃管再建術を施行した.術後病理組織学的所見はpT2(MP),N2,stage IIIであったため,術後補助療法としてDAV療法(ダカルバシン,ニムスチン,ビンクリスチン)および放射線療法60Gyを行った.術後6カ月目に肝転移が認められ,DAC-Tam療法(ダカルバシン,ニムスチン,シスプラチン,タモキシフェン)に変更,また免疫療法および放射線療法を行ったが,術後1年5カ月目に死亡された.原発性食道悪性黒色腫は稀であり,手術療法に加え補助療法が行われるケースが多いが予後不良な疾患である.今後化学,放射線治療や他の治療法を含めた集学的治療法を検討していく必要性がある.