2009 年 34 巻 1 号 p. 77-80
症例は25歳,男性.3日前からの腹痛を主訴に近医受診し腸重積の診断で当科紹介となった.来院時の腹部所見は右側腹部に強い圧痛と筋性防御を認めた.CTで上行結腸の部位に同心円状の層構造をもつ腫瘤が確認されたため,腸重積の診断で緊急手術となった.開腹すると回盲部を先進とした腸管が上行結腸まで重積していた.重積を解除したところ腸管の血流は良好で壊死は認めず,触診上腸管内に器質的疾患は触知しなかったため腸切除は行わなかった.術後経過は良好で,術後施行した注腸検査でも器質的病変は認められないため退院となった.成人腸重積は比較的稀な疾患であるが,小児の腸重積と異なり腫瘍などの器質的疾患に伴って二次的に起こるものが多く,手術による重積腸管の切除が一般的である.今回われわれは腫瘍などの器質的疾患が認められず,腸切除を行わずに治療した腸重積を経験したので文献的考察を含めて報告する.