日本外科系連合学会誌
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症例報告
腹腔鏡下虫垂切除術を施行した巨大虫垂結石の1例
矢川 陽介小林 慎二郎
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2009 年 34 巻 1 号 p. 81-85

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抄録

 虫垂結石症は稀な病態であるが,虫垂炎を発症すると重症化しやすく拡大手術が施行される場合もある.われわれは,巨大な虫垂結石を伴ったが軽度の炎症にとどまり,腹腔鏡下に施行した虫垂炎の1切除例を経験したため報告する.症例は59歳,男性,右下腹部痛で来院.同部に軽度の圧痛を認めたが,血液検査上,炎症反応はなかった.腹部X線で骨盤腔に輪状構造を伴う巨大石灰化像を認めた.腹部US,CTで腫大した虫垂内に石灰化像を確認し,虫垂結石を伴う虫垂炎と診断,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.結石は虫垂先端に存在し,30mm大,指圧で壊れず,割面は輪状構造を呈していた.病理組織学的診断は化膿性虫垂炎であった.術後33カ月,合併症なく経過している.本症例は,巨大な虫垂結石を伴ったが虫垂先端に存在したため炎症が軽度であったと考えられた.本症の重症化の指標は,結石の大きさよりも存在部位に依存すると考えられた.

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© 2009 日本外科系連合学会
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