2009 年 34 巻 1 号 p. 86-90
特発性S状結腸穿孔に伴い,後腹膜から皮下,縦隔まで広範に気腫を形成した1例を経験したので報告する.症例は73歳,男性,2006年2月下旬腹部膨満を自覚したために近医を受診.CTにて腹腔内遊離ガスと前胸部皮下,縦隔および後腹膜気腫を指摘され,当院救急外来に搬送された.来院時下腹部全体の腹膜刺激症状と頸部から前胸部に皮下気腫を認めた.S状結腸穿孔の術前診断で緊急手術(ハルトマン手術)を施行した.S状結腸腸間膜側の穿通により後腹膜膿瘍と気腫をきたし,腸間膜の一部が破綻したため腹膜炎を起こしたものと判断した.病理組織学的に特異的な所見はなく特発性S状結腸穿孔と診断した.術後経過は良好であり,術後第58病日に退院した.