抄録
同時性に食道小細胞癌と扁平上皮癌の重複を認めた稀な多発食道癌の1例を経験したので報告する.症例は63歳,女性.心窩部痛を主訴に施行した上部内視鏡検査で食道癌と診断され入院した.胸部上部食道(Ut)に2型,胸部下部食道(Lt)に1型の多発食道癌を認めた.術前の生検では,いずれも扁平上皮癌であった.術前のCT検査で明らかなリンパ節転移,遠隔転移はなく,T2 N0 M0 cStage IIの診断で右開胸開腹食道亜全摘術を行った.病理組織診断でLtの腫瘍は扁平上皮癌であったが,Utの腫瘍は小細胞癌で,免疫組織染色でNSE,CD56(NCAM),CEAが陽性,No.105リンパ節に小細胞癌の転移を認めた.術後10カ月目のCT検査で縦隔,肺門部リンパ節転移,多発肝転移,脾転移を認め,術後12カ月で原病死した.これまでの食道小細胞癌の報告と同様に予後は不良であった.