抄録
症例は63歳,男性.B型慢性肝炎と拡張型心筋症にて通院中であった.2009年3月に肝S5の5cm大の肝細胞癌に対し肝部分切除を行った.経過観察中,腹部造影CTで脾に約1.5cm大の腫瘍を複数個認め,FDG-PETで同部位に異常集積を示した.肝細胞癌の脾転移またはリンパ腫を疑い,診断と治療を兼ねて腹腔鏡下脾臓摘出術を行った.前回の肝切除による癒着を剝離し,主として超音波凝固切開装置を用いて脾周囲を剝離,脾門部は自動縫合器で一括切離し完全腹腔鏡下に切除を完了した.術後経過は良好で術後8日目に退院した.切除標本では脾内に白色調の腫瘍を複数個認め,病理組織検査でsplenic marginal zone lymphoma(SMZL)と診断された.SMZLには脾摘が有効であるとされ,早期に手術を施行すれば補助化学療法は不要とされている.脾腫瘍は術前診断が困難なことが多く,診断と治療を兼ねて脾摘を行う際には低侵襲である腹腔鏡手術が有用であると考えられた.