日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
37 巻, 2 号
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原著
  • 臼田 敦子, 瀧井 康公, 松木 淳, 中川 悟, 藪崎 裕, 梨本 篤, 大倉 裕二
    2012 年 37 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     目的:大腸癌術後の血栓について,下肢静脈超音波検査で検索し,その頻度と危険因子を明らかにする.方法:2008年10月から2011年3月までに初回手術を行った大腸癌症例385例に術後下肢静脈超音波検査を施行し,臨床学的因子との因果関係を統計学的に検討した.結果:下肢静脈血栓は58例(15.1%)にあり,性別の発生率は,男性:女性=21例(10.1%):37例(20.8%)で,女性の発生率が有意に高かった(p=0.0036).平均年齢は血栓有り群:血栓無し群=71.9:65.5歳で血栓有り群で平均年齢が高かった(p<0.0001).術前イレウスは,イレウス有り群で,血栓有り/無し=8例/10例(44.4%),イレウス無し群で,50例/317例(13.6%)で,イレウス有り群で有意に血栓を発症していた(p=0.0004).結語:以上の因子は血栓発生の危険因子として有用である可能性が示唆された.
特集
  • 片桐 聡, 高橋 豊, 大森 亜紀子, 加藤 孝章, 有泉 俊一, 小寺 由人, 江川 裕人, 斉藤 明子, 倉持 英和, 林 和彦, 山本 ...
    2012 年 37 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     【目的】高度進行肝細胞癌に対するSorafenib治療の現況,早期成績を明らかにする.【方法】Sorafenibを投与した高度進行肝細胞癌62例を対象とし,投与開始から28日目を基準に継続投与不能群と継続投与群に分け比較検討した.【結果】継続投与不能群:16例(25.8%),継続投与群:46例(74.2%)であった.両群間の背景は,継続投与不能群にChild-Pugh B+C が有意に多かった.継続不能理由は,肝機能悪化が9例,食思不振と多形紅斑が2例,下痢,消化管出血,経済的要因による服用拒否がそれぞれ1例であった.継続投与群のRECIST効果判定は,CR:2例,PR:1例,SD:18例,PD:25例であった.両群の累積生存率は,継続投与不能群のMSTは91日,継続投与群は393日で,後者が有意に良好であった(p=0.0026).開始投与量別では,800mg投与群のMSTは415日,400mg投与群は308日で有意差は認めなかった.【結語】高度進行肝細胞癌に対するSorafenib治療は,初期の投与中止脱落を防ぎ,長期継続投与することで治療成績が向上する.
  • 畑 泰司, 川西 賢秀
    2012 年 37 巻 2 号 p. 164-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     Bevacizumab(Avastin®)は2003年の米国臨床腫瘍学会で有効性が報告され,2007年より本邦で進行再発大腸癌に使用可能となった血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)をターゲットとした分子標的治療薬である.現在複数の癌腫に対し効果が認められており,特に大腸癌領域では実臨床においての使用経験も蓄積されている.本稿においてBevacizumabの薬理作用,現在までの臨床試験の成績,国内の特定使用成績調査集計結果をレビューし当院での治療成績を報告する.
  • 大澤 岳史, 吉松 和彦, 横溝 肇, 大谷 泰介, 中山 真緒, 塩澤 俊一, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2012 年 37 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     2次治療以降におけるCetuximab(Cmab)投与の治療効果につき報告する.
     対象は2次治療以降でCmabを投与した切除不能転移性大腸癌14例で,Cmabの抗腫瘍効果,生存期間,有害事象を検討した.
     抗腫瘍効果はPR5例,SD2例,PD7例,奏効率35.7%.化学療法開始からの生存期間は32.2カ月,Cmab開始後は11.6カ月であった.1カ月後CEA低下例は非低下例に比べて奏効率が高く,生存期間も延長していた.有害事象はGrade 2のinfusion reactionを1例認め,皮膚障害は13例にみられた.Grade 2以上の皮膚障害例は,Grade1以下に比べてPR例を多く認め,生存期間も延長する傾向にあった.
  • 石橋 敬一郎, 岡田 典倫, 石畝 亨, 桑原 公亀, 傍島 潤, 大澤 智徳, 隈元 謙介, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    2012 年 37 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     切除不能・進行再発大腸癌に対する化学療法は,従来の5-FUにoxaliplatinやirinotecanを併用したレジメンを基軸とし,さらに分子標的薬を加えることで多様化している.治療レジメンは,本邦の大腸癌治療ガイドラインに1次治療から3次治療まで推奨レジメンが記載されているが,実際の投与内容は各施設で委ねられているのが現状である.分子標的治療薬であるbevacizumabに関しては,切除不能・進行再発大腸癌に対する1次治療での有効性と安全性が確立しているものの,2次治療に対するbevacizumab投与の有効性に関する報告は少なく,第Ⅲ相臨床試験としては無増悪生存期間,全生存期間においてFOLFOX4に対するbevacizumabの上乗せ効果が実証されたE3200試験のみである.その他,2次治療でのbevacizumab継続投与の有用性を示唆した結果は観察研究として報告されているだけである.当科で2次治療のFOLFIRI療法にbevacizumab併用の有用性を検討したところ,bevacizumab併用例で非併用例に比べて,無増悪生存期間は4.4カ月,1次治療後生存期間は4.8カ月の延長が認められたものの統計学的に有意差は得られなかった.一方で,1次治療からbevacizumabを継続投与した症例において,1次治療が有害事象で中止の症例は,PDで中止となった症例と比べて,2次治療後生存期間の有意な延長が認められた.切除不能・進行再発大腸癌の2次治療に対するbevacizumab投与は,特に1次治療が有害事象を理由に中止された症例に有効であると考えられた.
  • 浅香 晋一, 成高 義彦, 五十畑 則之, 島川 武, 宮木 陽, 山口 健太郎, 村山 実, 勝部 隆男, 小川 健治, 藤林 真理子
    2012 年 37 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     当科では,進行食道癌に対する術前化学療法(NAC)として2001年よりFAP療法を,2009年からはDCF療法を行っている.本稿では,両者の安全性,有効性,完全切除率などを比較した.対象はcStage Ⅱ/Ⅲ(cT3)と診断し,NAC後手術を行った食道癌25例(FAP群15例,DCF群10例).対照は,NAC非施行で手術を行った66例(NACなし群)とした.
     NACの奏効率は,FAP群よりDCF群で高かったが,両群の生存率に差はなく,NACなし群と比較しても差はなかった.有害事象は,DCF群は血液毒性の頻度は高かったが,忍容性は良好であった.また,NACがより大きな腫瘍に対する完全切除率を向上させる可能性が示された.
     当科では現在,進行食道癌に対するNACとしてDCF療法を施行しているが,この結果が予後の改善に繋がるか,さらに症例数を増やして検討する必要があると考えている.
  • 坂東 悦郎, 杉沢 憲彦, 近藤 潤也, 徳永 正則, 谷澤 豊, 川村 泰一, 絹笠 祐介, 金本 秀行, 上坂 克彦, 寺島 雅典
    2012 年 37 巻 2 号 p. 189-196
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     目的:術前化学療法(NAC)の視点から,胃癌における術前の臨床病理学的予後因子を評価した.
     方法:胃癌curative intent症例について,年齢,性別,cN(CT上のリンパ節転移個数),cT(術前の深達度),組織型,腫瘍径,肉眼型,血清CEA,血清CA19-9の9個の術前予後因子を選択し,単変量・多変量解析にて生存転帰への重みを評価した.
     結果:単変量解析では性別を除く8個の因子が有意な予後因子となった(p<0.001).Cox回帰分析にて全症例では腫瘍径,肉眼型,cN(各p<0.001),cT(p=0.002)が独立因子として選択されたが,R0達成症例では腫瘍径,肉眼型(各p<0.001)のみ独立因子として選択され,cN(p=0.094),cT(p=0.062)は選択されなかった.
     結語: NAC適応の指標には,T,N以外に腫瘍径,肉眼型も考慮されるべきである.
  • 佐藤 勉, 利野 靖, 山田 六平, 大島 貴, 益田 宗孝
    2012 年 37 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     ACTC-GCで切除可能な進行胃癌に対する術後補助化学療法としてS-1が標準治療となったが,層別化解析でStage Ⅲに対する有効性は実証されなかった.そこで,予後不良である大型3型・4型胃癌やbulkyN2胃癌を対象とした術前補助化学療法(Neoadjuvant chemotherapy:NAC)が注目され,第Ⅱ相試験であるJCOG0210でS-1/CDDP療法の有効性が示され,現在第Ⅲ相試験であるJCOG0501が進行中である.しかし,今までNACの有効性の根拠として考えられてきたMAGIC試験やACCORD-07試験が,EORTC-04954試験結果から疑問視されてきている.
     本邦における切除不能・進行胃癌に対する標準治療はS-1/CDDP療法とされているが,さらなる治療成績向上のため3剤併用療法のDCS療法の第Ⅱ相試験が報告されている.海外でも3剤併用療法(DCF療法,DXP療法など)の臨床試験結果が報告され,治療成績の向上が期待されている.
     NACの治療効果を改善するための候補として3剤併用療法の第Ⅱ相試験が数多く計画されているが,JCOG0501の結果を踏まえて2剤と3剤併用療法の良質な第Ⅲ相試験が望まれる.
  • 山口 健太郎, 勝部 隆男, 宮木 陽, 村山 実, 臼田 敦子, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 島川 武, 成高 義彦, 小川 健治
    2012 年 37 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     【はじめに】進行胃癌に対するS-1+CDDP併用術前化学療法について,治療成績や有害事象,術後補助化学療法について検討した.
     【対象と方法】対象は,術前診断で遠隔転移のないT3(SE)N2(胃癌取り扱い規約第13版)以上の進行胃癌および4型胃癌で,S-1+CDDP併用術前化学療法を行ったのち手術を施行した21例.S-1は80mg/m2でday1-21,CDDPは60mg/m2でda8に投与し,2コース施行後4週間以内に手術を施行した.
     【結果】2コース完遂率は85.7%.治療効果はPRが11例で奏効率52.4%,生存期間中央値は988日であった.有害事象はGrad3以上を4例(19%)認めたが保存的に軽快した.組織学的効果はGrad0/1a/1b/2:4/10/2/5であった.Grad0と判定された症例はS-1単剤では効果がないと考え,他のレジメンを使用した.
     【結語】S-1+CDDP併用化学療法は,その効果や有害事象の点から,進行胃癌に対する術前化学療法として非常に有用なレジメンと思われた.また組織学的効果判定は術後補助化学療法のレジメン選択に有用であった.
  • 平野 明, 清水 忠夫, 上村 万里, 小倉 薫, 金 直美, 瀬戸口 優美香, 大久保 文恵, 井上 寛章, 藤林 真理子, 小川 健治
    2012 年 37 巻 2 号 p. 210-213
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     乳癌術前化学療法 (NAC)の組織学的効果別の予後を検討した.対象はNACを施行した腫瘍径3cm以上もしくはN1以上でM0の乳癌178例.NACのレジメンはET:Epirubicin, Docetaxel(DTX) 27例, EC (Cyclophosphamide)-DTX 80例,EC-weekly paclitaxel(PTX)±trastuzumab(T) 71例(うち+T22例).組織学的効果は狭義のpCRが17例(10.3%),pDCISを加えた広義のpCRが27例(16.4%).狭義のpCR群とnon pCR群の5年無病生存率(DFS)は93.8%,64.9% (p=0.0497),広義のpCR群とnon pCR群の5年 DFS は79.9%,65.2% (p=0.0666)と狭義のpCR群で有意に予後良好であった.無病生存の多変量解析でも,狭義のpCRが独立した予後因子となった.以上より,狭義のpCRは予後良好を示すsurrogate markerである.
  • 庄子 忠宏, 髙取 恵里子, 杉山 徹
    2012 年 37 巻 2 号 p. 214-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     子宮頸がんに対するNAC(neoadjuvant chemotherapy)は,過去の報告では有用性に関して一定の見解が得られていない.しかし最近,同時化学放射線療法(CCRT)の限界が見えてきたことや妊孕能温存という観点から,NACは改めて注目されている.2010年のCochrane reviewでは6つのRCT(1,036例)が解析され,NAC+手術群は初回手術群に対し無病生存率を改善することが報告された.NAC+手術療法は患者の予後を改善させる可能性はあるものの,初回手術群を上回る有用性についてはいまだ結論は出ていない.よってNACは臨床試験として行われるべきであり,今後の研究に期待したい.
  • 五嶋 孝博, 篠田 裕介, 津田 祐輔, 山川 聖史, 穂積 高弘
    2012 年 37 巻 2 号 p. 223-232
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     骨軟部肉腫の術前化学療法は,骨肉腫の患肢温存手術で用いる特注人工関節が完成までの待機期間に腫瘍が進行するのを防止する目的で1970年代に始まった.骨軟部肉腫における術前化学療法の目的は,遠隔微小転移に対して早期に治療を開始すること,原発腫瘍を縮小させることで腫瘍切除を容易にして患肢とその機能を温存すること,化学療法の効果判定を行うことである.化学療法に対する感受性が高い骨肉腫やEwing肉腫は術前化学療法の絶対適応である.悪性線維性組織球腫などの大多数の高悪性度非円形細胞肉腫は補助化学療法の有効性が証明されておらず,術前化学療法の相対適応である.骨軟部肉腫は補助化学療法の有効性に関するエビデンスが乏しいため,個々の患者における術前化学療法の有効性を判定して術後化学療法施行の適否を決定するという見地と患肢の良好な機能を温存するという見地から,補助化学療法を術前に行うことには意義がある.
臨床経験
  • 杉本 真一, 徳家 敦夫
    2012 年 37 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     【方法】当科でCetuximab(Cmab)/Panitummab(Pmab)療法が施行された切除不能進行再発大腸癌26/24例の治療成績を後方視的に検討した.
     【結果】治療背景(Cmab/Pmab)は1次/2次/3次治療以降:1/5/20 / 3/2/19例,Cmab/Cmab+irinotecan:14/12例 / Pmab/Pmab+FOLFIRI:16/8例,治療効果(Cmab/Pmab)は奏効率:33.3/16.7%,病勢制御率:61.1/66.7%,治療成功期間中央値:4.0/6.1カ月,有害事象(Cmab/Pmab)はinfusion reaction:2/0例,ざ瘡様皮疹:50.0/58.3%(Grade3は1例)であった.
     【結論】Cmab/Pmab療法の多くは3次治療以降の単剤投与であったが,病勢制御は良好であり有害事象も許容内であり,治療効果および認容性は良好であった.
症例報告
  • Fumi Saito, Hideaki Ogata, Tetsuo Nemoto, Chikako Hasegawa, Shunsuke M ...
    2012 年 37 巻 2 号 p. 239-243
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
    A 70-year-old woman receiving highly active antiretroviral therapy (HAART) for human immunodeficiency virus (HIV) infection presented at our clinic after she noticed a 1-cm mass in her left breast. A palpable tumor was diagnosed as squamous cell carcinoma with fine needle biopsy, but imaging revealed that the main lesion was surrounded by multiple tumors. We performed a left total mastectomy. Histopathology of the surgical specimen revealed an invasive squamous cell carcinoma surrounded by multiple ductal adenomas. There are few reports of neoplastic lesions in the breasts of patients with HIV. We report an illustrative case and discuss our findings in light of recent reports.
  • Masayoshi Nishina, Satoru Morita, Takamitsu Masuda, Hiroyasu Suga, Tos ...
    2012 年 37 巻 2 号 p. 244-247
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
    Subclavian artery injury is rare, but can cause both limb-and life-threatening conditions by rupture into the thoracic cavity. We report the case of a 59-year-old man with subclavian artery injury due to blunt trauma that was successfully treated by endovascular repair. Computed tomography showed a small aneurysm in the left subclavian artery close to the fractured left clavicle. We initially attempted conservative treatment because the aneurysm was small and signs of ischemia were absent. However, the aneurysm continued to increase in size and showed a risk of rupture into the thoracic cavity, which would have been life-threatening. A covered stent was placed 2 weeks after injury following a rapid increase in size of the aneurysm with relapsed pain. The aneurysm disappeared following stent placement and patency of the subclavian artery was preserved. Endovascular repair should be considered in the early phase after subclavian artery injury, even if the lesion is small.
  • 古川 健司, 吉利 賢治, 江口 礼紀
    2012 年 37 巻 2 号 p. 248-251
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は80歳男性.食物の通過障害で,上部消化管内視鏡検査施行し,食道噴門接合部に2/3周の不整隆起あり,生検でatypical cellsを指摘され,腹部CTで,大動脈周囲にリンパ節腫大を認めたため,低分化型食道癌や低分化型胃癌の浸潤の疑いで,左開胸開腹下部食道切除,胃管再建,2領域リンパ節郭清術(D2)を施行し,LN#16a2も郭清した.病理はundifferentiated carcinoma,non-small cell type,pN4(+),StageⅣaで,CDDP+VP16療法を2クール施行.術後6カ月,CTで左副腎下極に1.9×2.2cmの低吸収腫瘤があり,左副腎転移疑いで,左副腎摘出術施行.病理はundifferentiated carcinomaで左副腎転移と診断.CDDP+VP16療法を1クール施行したが,それ以降化学療法は行わず,3年11カ月無再発生存中である.
  • 青木 顕子, 金子 恵, 円谷 美也子, 伊藤 友一, 椿 昌裕, 加藤 広行
    2012 年 37 巻 2 号 p. 252-256
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     アニサキス症は年間2,000〜3,000例と日本人の間で最もよくみられる寄生虫症の一つである.その中でも98%が急性胃アニサキス症であり,腸アニサキス症は約2%と極めて稀なケースである.
     治療としては,対症療法による保存的治療が一般的に行われており,症状に比し腹部の理学的所見が乏しいことが多いため,手術を必要とされることは比較的稀である.腸アニサキス症は,腹痛・イレウス・腹水を伴う場合が多く,急性腹症として開腹され,切除小腸内に虫体断端を見出し,診断が確定される例が多い11)
     他疾患による急性腹症との鑑別診断は困難であり,術前確定診断には詳細な病歴聴取を行い,慎重に腹部所見を得,積極的な検査の活用により総合的判断が重要である.
     今回,われわれは腹膜刺激症状から手術適応であると判断し,開腹手術を施行し,小腸アニサキス症と診断した1例を経験したので報告する.
  • 鈴村 和大, 平野 公通, 黒田 暢一, 岡田 敏弘, 飯室 勇二, 藤元 治朗
    2012 年 37 巻 2 号 p. 257-261
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は67歳の男性で,胃癌(T2,N1,H0,P0,M0,StageⅡ)に対して幽門側胃切除術を施行した.術後3年後のCTで腹腔内腫瘤が認められたためfluorodeoxyglucose positron emission tomography (以下,FDG-PET)を施行した.腫瘤へのFDGの集積は軽度(standard uptake value:SUV max 早期像3.14,後期像3.15)であり,胃癌のリンパ節再発よりもデスモイド腫瘍などの良性の腹腔内腫瘍の可能性が高いと考えられたため手術を施行することとし,空腸の一部を合併切除する形で腫瘤摘出術を行った.病理組織学的検査では空腸腸間膜原発のデスモイド腫瘍と診断された.術後約42カ月の現在,明らかな再発は認めていない.FDG-PETは癌再発との鑑別が困難なデスモイド腫瘍の術前診断に有用である可能性があると考えられた.
  • 服部 優宏, 鈴木 昭
    2012 年 37 巻 2 号 p. 262-270
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例1は53歳男性の透析患者で,突然の腹痛で受診した.CT上,門脈ガスと腸管虚血あり,緊急に小腸切除術を施行した.症例2は76歳女性で,腹満主訴で搬送された.CT上,門脈ガスを認め,炎症反応高値のため緊急手術したが腸管壊死はなく閉腹した.症例3は高血圧と糖尿病で通院中の83歳女性で,腹痛,嘔吐と意識混濁で搬送された.CT上,広範囲な門脈ガスと小腸の拡張を認めた.保存的治療を開始したが22時間後,全身状態悪化し緊急に小腸切除術を施行した.症例1,3は病理組織学的検査所見で非閉塞性腸管膜虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia,以下NOMI)と診断した.症例2は臨床的にNOMIを疑ったが確定診断はできなかった.NOMIは予後不良とされてきたが,門脈ガス血症の重要な原因疾患の一つであることを念頭に,適切な治療を選択すべきである.それが救命率の上昇に貢献しえる.
  • 神谷 浩二, 神谷 尚子, 豊岡 晃輔, 塩路 康信
    2012 年 37 巻 2 号 p. 271-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     特発性多発小腸穿孔の1例を経験した.患者は84歳男性.細菌性肺炎の診断に入院となり,4週間の抗菌薬治療を行った.入院後より食思不振が続き,入院第42病日より腹痛,発熱を認めた.腹部CT検査所見より消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.小腸に多発する穿孔病変を認めたため,穿孔部位を含めた小腸切除を施行した.病理組織学的所見からは小腸穿孔の原因の同定には至らなかった.術後,小腸の再穿孔をきたし全身状態は悪化し,術後第9病日に死亡退院した.
  • 山奥 公一朗, 佐伯 博行, 片山 雄介, 菅沼 伸康, 樋口 晃生, 藤澤 順, 松川 博史, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    2012 年 37 巻 2 号 p. 275-279
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は42歳,女性.帝王切開の既往がある.腹痛,嘔吐にて近医を受診,絞扼性イレウス疑いで同日当院を紹介され入院した.来院時,腹部全体に圧痛および腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CT検査で骨盤腔内小腸の拡張,浮腫性壁肥厚,腹水貯留を認め,子宮の右側への変位もみられ,絞扼性イレウスの診断で同日緊急手術を施行した.手術所見は,回腸末端から10cm口側の回腸が100cmにわたって左子宮広間膜に生じた裂孔に嵌頓し,虚血壊死を呈していた.嵌頓腸管を用手的に整復し,虚血となった回腸を回盲部を含めて切除し,裂孔部は縫合閉鎖して手術を終了した.術後経過は良好で,術後第9病日に退院した.
     子宮広間膜裂孔ヘルニアは,子宮広間膜に生じた異常裂孔に起因する内ヘルニアで稀な疾患である.女性の開腹歴のない原因不明のイレウスは本症を念頭に置き,早期の診断と治療が必要と思われる.
  • 神 康之, 山田 貴允, 韓 仁燮, 林 茂也, 熊頭 勇太, 前澤 幸男, 蓮尾 公篤
    2012 年 37 巻 2 号 p. 280-283
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     腸管子宮内膜症は子宮内膜組織が異所性に腸管内に増殖する非腫瘍性疾患である.今回,われわれは腸閉塞にて発症した回腸子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は48歳女性.下腹部痛を主訴に当院内科受診.腸閉塞の診断にて入院となる.イレウス管挿入し保存的治療を行っていたが改善せず外科紹介となる.小腸造影にて回腸末端部の近傍に強度の狭窄があり,この部位を腸閉塞の原因と考え,開腹手術を施行した.回腸末端は捻じれるように強固に癒着していた.術式は回盲部切除を行った.病理組織学的検査にて異所性子宮粘膜の増生を認め回腸子宮粘膜症と診断した.術後経過良好で,術後2年経過した現在無再発である.腸管子宮内膜症はS状結腸以下の部位に84%が発生し,回腸に発生する頻度は7%と比較的稀であるため今回報告する.
  • Takahiro Umemoto, Kazuaki Yokomizo, Gaku Kigawa, Hiroshi Nemoto, Kenji ...
    2012 年 37 巻 2 号 p. 284-286
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
    The patient was a 40-year-old woman with right lower abdominal pain that occurred during menstruation only who had no history of endometriosis. Her McBurney’s point was positive with abdominal guarding and rigidity. Gynecological examinations showed normal results. Her menstrual cycles were regular. Abdominal computed tomography and ultrasonography showed a 30 mm mass involving the ileocecal junction that was suggestive of an appendiceal abscess.
     The patient underwent resection of the bowel segment affected by the disease, followed by anastomosis of the ileum and ascending colon for immediate restoration of intestinal transit. Histological analysis confirmed the diagnosis of endometriosis. The patient remains asymptomatic in 20 months of follow-up after surgery.
  • 高橋 里奈, 永易 希一, 石山 隼, 杉本 起一, 神山 博彦, 柳沼 行宏, 小島 豊, 仙石 博信, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2012 年 37 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     成人の腸重積症は比較的稀な疾患であるが,その多くは大腸癌が原因である.今回,盲腸癌による腸重積症例を経験し,過去5年間の大腸癌による本症の本邦報告例の検討を含めて報告する.
     症例は82歳,男性.腹痛を主訴に近医受診した.右下腹部に腫瘤を認め,当科外来を紹介受診した.腹部CT検査で上行結腸内腔に入り込む腫瘤性病変を認めた.大腸内視鏡検査では上行結腸に内腔を占める腫瘤を認めた.生検の結果は腺癌で盲腸癌による腸重積症の診断で手術を施行した.手術所見では盲腸が上行結腸に重積しており,結腸右半切除術を施行した.術後は経過良好で術後28病日に退院となった.成人の腸重積症は比較的稀であるが,その多くは大腸癌が原因である.今回,過去5年間の大腸癌による腸重積症の本邦報告例の検討を含め報告する.
  • 神谷 浩二, 神谷 尚子, 豊岡 晃輔, 塩路 康信
    2012 年 37 巻 2 号 p. 292-297
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     急性虫垂炎をきたした虫垂根部神経鞘腫の1例を経験した.患者は73歳男性.下腹部痛を主訴に当院を受診した.急性虫垂炎による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術となった.虫垂に著しい炎症を認め,炎症は周囲脂肪織に及び膿性腹水を認め,虫垂切除術および腹腔内ドレナージを行った.病理組織学的および免疫組織学的所見より急性虫垂炎による汎発性腹膜炎,虫垂神経鞘腫と診断した.手術後の経過は良好で,術後第12病日に軽快退院した.
  • 丹羽 浩一郎, 永易 希一, 高橋 玄, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2012 年 37 巻 2 号 p. 298-302
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は66歳,男性.3年前より排便時に水様の排液を認めるも経過観察していたが,下肢の浮腫と全身倦怠感を認め,精査加療目的で入院となった.入院時BUN 87mg/dl,CRE 2.67mg/dlと腎機能障害とNa 119mEq/l,K 3.0mEq/l,Cl67mEq/lと電解質異常を認めた.大腸内視鏡検査では,直腸に粘液分泌を伴う腫瘍を認め,生検結果は絨毛腺腫であった.絨毛腺腫から粘液分泌を伴うことにより,電解質異常を呈するelectrolyte depletion syndrome(以下,EDSと略記)と診断した.補液で脱水,電解質異常を改善した後に,手術を施行した.切除標本で絨毛構造を有する腫瘍を認め,病理組織学検査では絨毛腺腫で,粘膜固有層の一部に高分化管状腺癌を伴っていた.術後臨床症状は改善した.EDSを呈した大腸絨毛腫瘍は比較的稀な病態であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 菅野 雅彦, 福永 正氣, 永仮 邦彦, 李 慶文
    2012 年 37 巻 2 号 p. 303-308
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     錠剤型腸管洗浄剤(ビジクリア)による前処置に関連した腎不全を併発したと考えられる上行結腸癌の1例を経験したので注意の喚起も兼ねて若干の文献的考察を加え報告する.症例は腎疾患の既往のない69歳男性.上行結腸癌の診断を受け,加療目的にて入院.血液生化学検査では腎機能は正常.術前日,錠剤型腸管洗浄剤を朝から内服,午後に大腸内視鏡検査によるマーキング施行.錠剤型腸管洗浄剤投与1日後に腹腔鏡下右半結腸切除を施行.術中トラブルもなく,循環動態は安定していたが,術中より尿量が少なかった.術直後の血液検査で腎機能障害を認め,急性腎不全に対する治療を開始.錠剤型腸管洗浄剤に関連した腎不全と診断した.徐々に尿量は増加するも腎機能正常化せず.錠剤型腸管洗浄剤投与後23日に退院.退院後39カ月経過するも慢性腎不全の状態である.
  • 大木 岳志, 井上 雄志, 金子 由香, 須佐 真由子, 上小鶴 弘孝, 山本 雅一
    2012 年 37 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は84歳,男性.下部消化管内視鏡検査で横行結腸に2型進行癌を認めた.患者は心筋梗塞のため,右胃大網動脈(RGEA)用いた冠状動脈バイパスの既往があった.術前に3D-CTを施行し,グラフト血管の走行を確認した.手術は腹腔鏡下手術を行った.まず肝円索右側腹側へ立ち上がるように拍動するグラフト血管を確認した.大網の脂肪は豊富で,大網内のグラフト血管は透見できないため,大網自体を損傷しないように横行結腸から剝離した.腸間膜の血管処理は体外操作で行った.CABG後の上腹部手術は,グラフト血管を損傷しないように開腹手術で行うことが多いが,今回,腹腔鏡手術を行うことで安全にCABG後の横行結腸切除術を施行しえた.
  • 笠島 裕明, 森本 芳和, 弓場 健義, 藤井 眞, 赤丸 祐介, 河野 恵美子, 山崎 芳郎
    2012 年 37 巻 2 号 p. 314-319
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     結腸穿孔をきたした重症急性膵炎に対し,4回のpolysurgeryを行い救命しえた1例を経験した.症例は40歳,男性.腹痛を主訴に来院し,重症急性膵炎の診断下,保存的加療を行ったが,感染性膵壊死さらにはDIC,敗血症,ARDSをきたした.壊死膵切除・ドレナージ術を施行し,DICおよびARDSの改善を認めたものの,感染徴候は遷延した.術後93日目に行った留置チューブからの造影検査の結果,膵周囲膿瘍腔と横行結腸に瘻孔形成を認めた.膵の炎症は広範に周囲臓器へ波及し,左後腹膜に生じた膿瘍腔への経皮的ドレナージに加え,回腸人工肛門造設術やその後の瘻孔腸管の空置と横行-上行結腸端々吻合術など計4回の手術を要した.初回手術から退院まで261日を要したが,現在,栄養状態は良好に維持され,日常の生活に復している.
  • 西和田 敏, 高 済峯, 向川 智英, 渡辺 明彦
    2012 年 37 巻 2 号 p. 320-325
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は63歳,男性.B型慢性肝炎と拡張型心筋症にて通院中であった.2009年3月に肝S5の5cm大の肝細胞癌に対し肝部分切除を行った.経過観察中,腹部造影CTで脾に約1.5cm大の腫瘍を複数個認め,FDG-PETで同部位に異常集積を示した.肝細胞癌の脾転移またはリンパ腫を疑い,診断と治療を兼ねて腹腔鏡下脾臓摘出術を行った.前回の肝切除による癒着を剝離し,主として超音波凝固切開装置を用いて脾周囲を剝離,脾門部は自動縫合器で一括切離し完全腹腔鏡下に切除を完了した.術後経過は良好で術後8日目に退院した.切除標本では脾内に白色調の腫瘍を複数個認め,病理組織検査でsplenic marginal zone lymphoma(SMZL)と診断された.SMZLには脾摘が有効であるとされ,早期に手術を施行すれば補助化学療法は不要とされている.脾腫瘍は術前診断が困難なことが多く,診断と治療を兼ねて脾摘を行う際には低侵襲である腹腔鏡手術が有用であると考えられた.
  • 山田 卓司, 宮本 仁呂衣, 谷口 清章, 武市 智志, 笹川 剛, 喜多村 陽一, 山本 雅一
    2012 年 37 巻 2 号 p. 326-330
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は53歳男性で右下腹部痛を主訴に来院,腹部超音波検査を施行したところ同部に40mm大の低エコーを示す腫瘍性病変を指摘.各種画像検査行うも質的診断不明であり,有症状であることから手術を施行した.腸管に近接することから消化管GISTを疑い腹腔鏡手術を予定したが,腹腔鏡観察を行ったところ腹腔内に腫瘍はなく,右下腹部腹壁内から腹膜を圧出する形態を呈する腫瘍を認めた.腫瘍は腹壁内に限局しており腹腔内には露出しておらず,開腹することなく体表側から摘出可能であった.摘出標本は直径40×35 mmの弾性硬の腫瘤であり,割面は黄色無構造で被膜を有していた.病理的に腫瘍はCD20陽性リンパ濾胞細胞と周囲のCD3陽性細胞からなり,イムノグロブリンκ,λ鎖陽性細胞は同程度に存在することからCastleman’s diseaseと診断された.術後経過は良好であり術後7日目に軽快退院された.外来で2年7カ月間経過観察中,再発を認めていない.腹壁原発のCastleman’s diseaseは極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 坂口 孝宣, 鈴木 淳司, 稲葉 圭介, 福本 和彦, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2012 年 37 巻 2 号 p. 331-335
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     われわれは肝硬変合併肝細胞癌に対する肝切除後大量腹水貯留に対して腹腔静脈シャントが著効した1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.15年間C型肝炎による肝機能異常にて近医通院.平成22年10月定期的CT検査で前尾側亜区域(S5)に1.5cmの腫瘍を指摘され,当科紹介された.肝障害度Aで12月S5亜区域切除を施行した.第5病日ドレーン抜去後腹水が貯留し始め,経口摂取や自力起座不能となった.急性腎不全や食道静脈瘤の出血を併発,3回の腹水ろ過濃縮還元後も改善傾向なく,第56病日に腹腔静脈シャントを作成した.MRSA感染によるシャント抜去,再留置を要したが,現在再発なく完全に自立した生活を送っている.肝切除後の不安定な肝機能状態にあっても,大量腹水に対する腹腔静脈シャントは考慮すべき方法であり,文献的考察を加えて報告する.
  • Takahiro Umemoto, Kazuki Shinmura, Kazuaki Yokomizo, Gaku Kigawa, Hiro ...
    2012 年 37 巻 2 号 p. 336-339
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
    A 69-year-old man was admitted to the emergency medical center of our hospital in September 2008, with complaints of abdominal pain and distension. Clinical examination showed abdominal distension, decreased bowel sounds, and tenderness in the right upper abdomen with rebound tenderness. Unenhanced abdominal computed tomography showed intra-abdominal free air, ascites, and air collection within the bowel wall. The possibility of perforated peritonitis associated with the unexplained free air and ascitic fluid could not be eliminated, and therefore, emergency laparotomy was performed. During the surgery, a large amount of free air escaped when the abdomen was opened. Multiple gas-filled subserosal vesicles were found to be scattered throughout the surface of the bowel wall and the mesentery and almost entirely in the small intestine. There was no evidence suggestive of gastrointestinal tract perforation. Therefore, pneumatosis cystoides intestinalis (PCI) was diagnosed. After the surgery, the patient has remained healthy, and no recurrence of PCI has been observed to date.
  • 鈴木 隆, 長谷部 行健, 尾作 忠知, 白坂 健太郎, 永澤 康滋
    2012 年 37 巻 2 号 p. 340-343
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     症例は84歳女性.腸閉塞の診断で保存的治療をしていたが,軽快しないため当科紹介受診となった.術前CTで,右閉鎖孔のRichter型ヘルニアと診断し手術となった.開腹所見では,盲腸右側の後腹膜,盲腸後窩に相当する部位に1cmほどのヘルニア門があり,回盲部より約50cmの部位の回腸が内容の嵌頓ヘルニアで,閉鎖孔に異常は認めなかった.盲腸後窩ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断した.約10cmの回腸がヘルニア内に嵌頓していたが,血流障害は認めなかったのでヘルニア囊を切開,門を開放し手術を終えた.術後経過は良好であった.
  • 豊田 哲鎬, 塩谷 猛, 渋谷 哲男
    2012 年 37 巻 2 号 p. 344-347
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/08
    ジャーナル フリー
     Spigelヘルニアは腹壁ヘルニアの中で稀な疾患である.今回われわれは鼠径ヘルニアと診断され約10年間経過をみられていたSpigelヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.10年前より近医で鼠径ヘルニアと診断されたが,症状がなく経過観察されていた.立位にて右下腹部に違和感が出現するようになったため当院を受診した.右鼠径部より頭側にヘルニア門を認めた.腹圧をかけるとヘルニア囊の脱出を認めたが,還納は容易であった.腹部・骨盤CTを施行したところ,腹直筋右外側から連続する腱膜の欠損がみられ,同部位に脱出する腸管を認めた.Spigelヘルニアの診断で手術を施行した.右下腹部,腹直筋外縁に7×5cmのヘルニア囊を認め,Composix Kugel patchで修復した.術後経過は良好であり,第5病日に退院した.現在術後13カ月経つが再発は認めていない.
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