2013 年 38 巻 5 号 p. 984-989
症例は68歳,男性.嚥下時のつかえ感を主訴に精査を行い,胸部下部食道に全周性の2型扁平上皮癌を認めた.進行度はcT3 cN2 cM0 cStageⅢであった.胸腹部造影CTを施行した際,未治療の弓部大動脈瘤(径40mm,囊状瘤)を認めた.経鼻経管チューブで栄養管理を開始後,動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行した.術前化学療法としてFP療法(5FU 600mg/m2,CDDP 60mg/m2)を開始したが,Grade3の下痢・腎機能障害を認め1サイクルで終了.胸部下部食道切除・後縦隔胃管再建・腸瘻造設術を施行した.術中所見で大動脈周囲の強固な癒着のためNo.106recL・106tbLの郭清は行わなかった.術中および術後合併症は認めず,術後15日で退院した.病理組織結果はpT3 pN1(1/29)pM0 StageⅢで化学療法の組織学的効果判定はGrade 1aであった.