抄録
症例は61歳女性.背部痛を訴え近医を受診した.超音波検査にて前年の検診では指摘されなかった45mm大の膵頭部囊胞性腫瘍を認め,当科を受診した.腹部CT検査では中心部石灰化と実質構造,周辺部に大小不同の囊胞構造を伴う43mm大の多房性囊胞性腫瘤を認めた.腹部MRI検査ではT2強調画像で高信号を示す46mm大の多房性囊胞性腫瘤を認めた.ERCP検査では主膵管の拡張および囊胞との交通は認めなかった.以上より膵頭部の漿液性囊胞腫瘍と診断した.急速な増大を認め,CT検査上でも悪性を否定できなかったことにより手術適応と判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には膵周囲組織や血管浸潤,リンパ節・遠隔転移を認めず,漿液性囊胞腺腫と診断した.核異型や分裂像は認めなかったが,一部の立方上皮に悪性を示唆する所見であるback to back様構造を認めた.膵漿液性囊胞腺腫の1例を経験したので報告した.