抄録
上腸間膜静脈血栓症は比較的稀な疾患であり,しばしば致命的な結果となりうる疾患である.今回われわれは対照的な経過を辿った2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.1例目は63歳男性,2例目は58歳男性,2例とも増悪する下腹部痛を主訴に救急外来受診.造影CTにて上腸間膜静脈血栓症と診断した.抗凝固療法を行い,1例目は入院後第15病日の造影CTにて血栓の消失を確認し退院した.2例目は深部静脈血栓症の既往があり抗凝固薬を内服していたが自己中断していた.経過中に腎不全もきたしたためCHDFも同時に施行した.症状は一時改善したが,第8病日に増悪を認め緊急手術を施行した.手術は広範囲の小腸壊死を認めたため小腸切除を施行したが第9病日に永眠された.本症は腸間膜動脈血栓症ほど急激な発症形式をとらず,抗凝固療法が奏効しなければ大量腸切除となりかねない予後不良な疾患であると考えられる.