抄録
後腹膜脂肪腫は稀な疾患である.これまで,開腹による摘出術が行われてきた.一方,腹腔鏡手術では拡大視効果により精緻な手術が可能である.症例は82歳男性で,便秘と腹痛の精査のため行ったCTにて直腸前方の骨盤内後腹膜腔に精囊や前立腺と接する60×55mmのlow density な腫瘤を指摘され,脂肪腫が疑われた.悪性腫瘍の可能性も否定できないため,腹腔鏡下に摘出術を行った.病理組織学的診断は脂肪腫であった.骨盤内後腹膜脂肪腫に対する腹腔鏡下摘出術は本症例がはじめてであったが,本術式は様々な臓器や脈管が近接して存在する骨盤内深部で腫瘍摘出を低侵襲に行える有用な手段であると考えられた.