抄録
1997年1月から2012年3月の間に,直腸癌に対し骨盤内臓全摘術(total pelvic exenteration,TPE)を施行した12例の手術部位感染(surgical site infection,SSI)因子の頻度について,同時期の前方・後方PE19例,腹会陰式直腸切断術(abdomino-perineal resection,APR)79例を対照に後方視的に検討した.また全症例を対象にSSI発生の危険因子について解析した.SSI全体の頻度はTPE58.3%,前方・後方PE52.6%,APR39.2%で術式間に有意差はなかった(p=0.32).切開創感染(incision site infection,IS)の頻度はAPR19.0%に対し,TPE41.7%,前方・後方PE42.1%であり,APRが最も低かったが(p=0.05),臓器・腔感染(organ/space infection,OS)の頻度は,TPE33.3%,前方・後方PE31.6%,APR20.3%と差はなかった(p=0.41).ロジスティック回帰による多変量解析では,SSI全体では出血量75percentile以上(p=0.04),ISではpassive drainage(p<0.01),OSでは出血量75percentile以上(p=0.02)および術当日のみの予防的抗菌薬使用(p=0.03)がSSI発生の独立危険因子であった.TPEは前方・後方PEあるいはAPRと比較してSSIのリスクは増加しないが,TPEを含めた骨盤腔に広範な死腔が生じる術式に共通したSSI対策を講じる必要がある.