日本外科系連合学会誌
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症例報告
膵頭十二指腸切除術後に肝および脾の血流障害を起こした1例
坂田 和也髙森 啓史生田 義明中原 修田中 洋馬場 秀夫
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2015 年 40 巻 2 号 p. 232-237

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抄録

肝臓は,二重血流支配を受けており,梗塞を起こりにくい臓器であるが,一旦肝梗塞をきたした場合には致死的な経過を辿ることもある.症例は75歳,女性.定期血液検査時に高アミラーゼ血症を認め,腹部CTにて膵病変を認めた.精査にて膵管内乳頭粘液性腫瘍由来膵癌と診断した.術前の血管造影にて正中弓状靭帯圧迫症候群による腹腔動脈幹の狭窄を認めた.亜全胃温存PD後2日目にトランスアミナーゼの著明な上昇を認めた.腹部造影CTでは肝左葉,尾状葉および脾臓の造影不良域を認め,肝脾虚血と診断した.また,左胃動脈領域の粘膜にも造影不良域を認めた.抗凝固療法,プロスタグランディン製剤投与による保存的加療を行い,膿瘍形成なども認めず,軽快退院となった.
正中弓状靭帯圧迫症候群による腹腔動脈狭窄を有する症例に対するPDでは,術前・術中に血流動態を評価し,正中弓状靭帯開放や腹腔動脈幹のバイパス術の追加手術も念頭に置き,手術を行うことが術後の内臓虚血予防に重要であると考えられた.

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© 2015 日本外科系連合学会
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