抄録
症例は80歳代の女性.2014年6月に腹痛を主訴に当院外来受診.腹部は軽度膨満,左下腹部に限局する圧痛を認めたが,著明な腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CT検査では,横行結腸の遠位部からS状結腸近位部にかけて腸管壁の著名な浮腫と連続しない広範な漿膜下の気腫像を認めた.このほか少量の腹水の貯留を認めたが,腹腔内遊離ガスや門脈ガスは認めなかった.血液検査所見において白血球数,CRPの上昇は認めず,他に異常値はなかった.虚血性腸炎に伴う腸管気腫症の診断で,保存的治療の方針となった.入院加療9日目の腹部CT検査で同部位の壁肥厚および漿膜下のガス像は消失していた.入院加療13日目に退院となった.腸管気腫症は様々な背景疾患と関連する稀な状態であり,消化管壊死・穿孔の疑いから緊急手術も考慮される.本症例のように腹水貯留および漿膜下に広汎にガス像を伴う症例では,全身状態・腹部所見・各種検査所見を参考にして治療方針を決定するべきであると考えられた.