2015 年 40 巻 4 号 p. 699-704
症例は60歳代,男性.意識障害,タール便を主訴にpre-shock状態で当院に搬送された.緊急内視鏡検査で胃角部に出血性潰瘍を伴う5cmの粘膜下腫瘍(SMT),近傍に2cmのⅡc病変を認め,穹窿部にも2cmのSMTを認めた.腹部CTでも同様に胃角部,穹窿部に腫瘤性病変を認めた.胃GISTおよび早期胃癌の診断で待機的に開腹手術を施行した.術中,胃角部に胃壁内,穹窿部に胃壁外の腫瘍を認め,腹膜播種,肝転移は認めなかった.穹窿部の腫瘤が転移との鑑別が難しく胃全摘,D2廓清,脾合併切除,胆囊摘出,Roux-Y再建術を施行した.病理免疫組織学的診断においてSMTは2病変ともにKIT,CD34が陽性のGISTであった.胃癌はpor+sig,深達度はsm2であった.胃GISTと胃癌の併存は0.29%と報告されており,稀である.本症例は消化管出血が先行した多発胃GISTと胃癌合併症例で考察を加えて報告する.