抄録
症例は78歳男性.腹部の手術歴はなし.入院3日前に干し柿を食べ,その後より頻回の嘔吐をきたすようになり,近医を受診した.腹部レントゲン検査にてniveau形成を認め,イレウスを疑われ,当院に紹介となった.当院でのCTにて回腸にbubbly mass and impactionを認め,それより口側の腸管が著明に拡張していたことから,食餌性イレウス疑い,同日緊急手術を行った.臍部を3cm切開し,腹腔鏡で腹腔内を観察すると,回腸末端から約50cmの部位に硬い食物の嵌頓を認め,食餌性イレウスと診断した.腸管を創外に引き出し,milkingを試みたが困難で,やむなく腸管を3cm程度切開し,嵌頓した食餌を摘出した.腸管を縫合閉鎖し,手術を終了した.嵌頓していた食餌は干し柿であった.術後経過は良好で,第7病日に退院となった.詳細な問診を行うとともに,食餌性イレウスの特徴的なCT画像所見を認識し,術前診断することができれば,低侵襲な術式を選択することも可能となると思われた.