日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
40 巻, 5 号
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
原著
  • 傍島 潤, 幡野 哲, 松澤 岳晃, 大澤 智徳, 岡田 典倫, 横山 勝, 中田 博, 石橋 敬一郎, 持木 彫人, 石田 秀行
    2015 年 40 巻 5 号 p. 847-852
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    背景・目的:経腹的側端吻合術による再建を行った直腸癌における手術部位感染(surgical site infection,SSI)と骨盤内再発リスクを後方視的に検討した.
    対象・方法:直腸癌に対し,同一チームが待機的にSST施行した連続90例を対象とし,臨床病理学的因子,SSI,再発形式について診療録からデータを抽出・解析した.
    結果:年齢中央値64(29~90)歳,男性56例,腫瘍主占拠部位:RS 49例,Ra 35例,Rb 6例.組織学的Stage 0:7例,Ⅰ:28例,Ⅱ:24例,Ⅲ:35例,Ⅳ:3例.SSIは6例(6.7%)に認めた.CTによる観察期間中央値1839.5(102~4,509)日(n=78)で,骨盤内再発を認めた症例はなかった.結語:直腸癌に対する経腹的側端吻合術はSSIの発生や骨盤内再発のリスクは低く,外科感染症学的および腫瘍学的見地から安全な術式であることが示唆された.
症例報告
  • 尾辻 和尊, 尾身 葉子, 伊藤 悠基夫, 平田 勝, 関 邦彦
    2015 年 40 巻 5 号 p. 853-857
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性.呂律の回りにくさを自覚し,当院神経内科などを受診.神経学的,解剖学的に異常なく,経過観察となった.自身で甲状腺疾患を気にし,当院内分泌内科受診.甲状腺左葉に腫瘤を指摘され,当科紹介となった.エコーでは左葉上極に15mm大の不整形腫瘤,その尾側に40mm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診で,頭側の腫瘤は乳頭癌,尾側の腫瘤は腺腫様甲状腺腫の診断であった.これに対し手術を行ったところ,尾側の腫瘤は甲状腺との連続性を認めず,異所性の甲状腺組織から発生したものと考えられた.
    異所性甲状腺は,甲状腺原基の下降障害によるものと,甲状腺が固有位置に定着後,被膜が形成される以前に近位組織に迷入したものがあるが,後者は稀である.本症例は,後者に発生した腺腫様甲状腺腫と考えられた.
    甲状腺乳頭癌に併発した異所性腺腫様甲状腺腫の手術症例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
  • 宮﨑 進, 木村 豊, 藤谷 和正, 門田 卓士
    2015 年 40 巻 5 号 p. 858-862
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性,LD領域のtype2型の胃癌に対して平成18年6月幽門側胃切除,D2郭清,Roux-Y再建,胆囊摘出術を施行した.術後,吻合部狭窄以外に合併症を認めず,術後4週間で軽快退院となった.退院後2日目(術後30日目)より腹部膨満が出現し,入院となった.多量の腹水を認め,腹水性状は乳白色に混濁した乳縻腹水であった.絶食,高カロリー輸液,利尿剤投与,腹水ドレナージチューブ挿入による保存的治療が奏効し,入院後49日目に軽快退院となった.術後乳縻腹水は食事摂取開始早期から発症することが多く,術後1カ月以上経過して発症することは稀であるため,文献的考察を加えて報告した.
  • 小澤 修太郎, 狩野 契, 鋤柄 稔
    2015 年 40 巻 5 号 p. 863-868
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】PEG施行困難な3例に対し交換用ボタン型胃瘻キットを用いた小開腹胃瘻造設術を経験したので報告する.【症例】症例1は70歳男性で放射線化学療法治療後の全周性狭窄を伴う食道癌である.症例2は86歳女性で脳梗塞後遺症に伴う経口摂取困難症例で著明な頸部屈曲,亀背を認めた.画像上,胃前面に横行結腸が存在していた.症例3は80歳女性でアルツハイマー型認知症に伴う食事摂取困難症例である.S状結腸軸捻転に伴うイレウスのため当科に紹介された.画像上,胃前面にS状結腸が存在していた.この3例に関して小開腹胃瘻造設とした.【手技】全身麻酔下,上腹部に5cmの小開腹をおいた後,胃前壁に左側腹部より交換用イディアルボタンを経腹直筋的に挿入し固定,腹壁と胃壁挿入部を吸収糸で補強した.【結果】手術時間は20~35分で術後経過は良好であった.【まとめ】本法は特殊な器具を必要としないため簡単な方法で,ボタン式のため日常管理の上でも利点ありと考えた.
  • 三浦 泰智, 稲葉 一樹, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 法水 信治, 伊佐治 孝洋
    2015 年 40 巻 5 号 p. 869-874
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.近医で貧血を指摘され精査し径26cmの壁外発育型巨大胃Gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)を診断された.イマチニブによる治療が開始されたが腫瘍径の増大を認め当院へ紹介となった.腹部造影CT検査では胃内に突出する造影不均一な腫瘤と連続し,腹壁,膵,横行結腸を圧排する周囲との境界が比較的明瞭な30×25×18cm大の多房性囊胞性腫瘍を認めた.以上に対して開腹手術を施行した.膵体部,横行結腸間膜とは強固に癒着していたが腫瘍周囲の臓器浸潤は認めなかった.楔状胃切除により腫瘍を摘出した.病理組織学的所見では長楕円形核を有する紡錘形細胞が密に増殖する像を認めた.免疫染色にてKIT陽性,CD34陽性であった.術後18カ月を経過,再発は認めていない.本例のように直径30cm大に巨大化した胃GISTの報告は稀であり,文献的考察を含めて報告する.
  • 大橋 裕介, 中鉢 誠司, 名久井 雅樹
    2015 年 40 巻 5 号 p. 875-879
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    十二指腸前門脈を合併した胆囊結石症の症例に開腹胆囊摘出術を施行した.左上腹部で,下腸間膜静脈が脾静脈に合流し,さらに脾静脈と上腸間膜静脈の合流後門脈となり,右側腹部に向かって走行,十二指腸下行部と水平部の腹側でS字状に蛇行し,肝十二指腸間膜内で総胆管と固有肝動脈の腹側を走行し,肝門部にいたっていた.本症例は,門脈が十二指腸球部の腹側を走行し,十二指腸狭窄を示す,従来報告されているいわゆる十二指腸前門脈とは厳密には解剖が異なっていたが,発生学的に考察すると,十二指腸前門脈と同一の発生異常が関与していると考えられた.
  • 伊藤 栄作, 大平 寛典, 斉藤 庸博, 柳 舜仁, 鈴木 範彦, 筒井 信浩, 吉田 昌, 柳澤 暁, 鈴木 裕
    2015 年 40 巻 5 号 p. 880-884
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.慢性心不全,低栄養,混合性換気障害,脳梗塞などハイリスクであったが,閉塞性S状結腸癌に対して症状緩和目的にS状結腸部分切除,Hartmann手術を行った.術後10日目,突然の腹痛を訴え結腸人工肛門経路の創哆開から小腸脱出をきたした.同日,緊急手術を行いイレウス解除,創哆開部を単閉鎖した.術後,うっ血性心不全,心室細動を発症し死亡した.人工肛門造設を行う際,自経例のように創傷治癒遅延が予想され,腹壁が脆弱な症例においては腸管と腹壁への固定をより多く置くことにより,このような合併症を回避することができた可能性が考えられた.今回,結腸人工肛門経路の創哆開から小腸脱出をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 島村 隆浩, 星川 真有美, 前間 篤, 白川 元昭, 横山 日出太郎
    2015 年 40 巻 5 号 p. 885-890
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.左鼠径ヘルニア術後の再発に対してメッシュプラグ法による再発鼠径ヘルニア根治術を受けていた.術後9年目に,左鼠径部の腫脹と疼痛を主訴に来院した.腹部CT検査にて同部に膿瘍形成を認め,瘻孔造影検査では小腸への穿通が確認されたことから,メッシュプラグによる小腸損傷に起因した膿瘍病変と判断した.治療法としては,経皮的膿瘍ドレナージを先行したのち,開腹による小腸穿通部閉鎖と前方アプローチによるメッシュプラグ除去術を施行した.人工物(prosthesis)を用いた鼠径ヘルニア手術後の合併症として,小腸穿孔・穿通は稀な合併症ではあるが,一旦発症すると重篤となる可能性も高いので,その認識と術中の十分な注意が必要と考えられた.
  • 太田 嶺人, 佐藤 耕一郎, 阿部 隆之, 武藤 亮
    2015 年 40 巻 5 号 p. 891-895
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代女性.腹痛,吐血のため救急外来を受診した.緊急上部消化管内視鏡検査を施行したが,活動性の出血は認めず,経過観察目的の入院となった.入院後も腹痛が遷延したため単純CT検査を施行したところ,小腸の著明な拡張と腹水を認め,絞扼性イレウスと診断した.急性循環不全,急性腎不全を伴い,全身麻酔下での手術はリスクが高いと判断したため,補液およびlong tubeにより保存的加療を開始した.その後,全身状態の改善を認めたため,第3病日に開腹手術を施行した.術中所見では,両側のKugel patchが腹腔内へ突出し,両側で大網が癒着していた.骨盤腔左側では,Kugel patchの背側でS状結腸間膜との間に索状物の癒着があり,小腸が嵌頓し絞扼していた.Kugel patchに起因する絞扼性イレウスは報告例が少なく,稀な症例であり報告する.
  • 松井 俊樹, 加藤 弘幸, 湯浅 浩行
    2015 年 40 巻 5 号 p. 896-902
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性.腹部の手術歴はなし.入院3日前に干し柿を食べ,その後より頻回の嘔吐をきたすようになり,近医を受診した.腹部レントゲン検査にてniveau形成を認め,イレウスを疑われ,当院に紹介となった.当院でのCTにて回腸にbubbly mass and impactionを認め,それより口側の腸管が著明に拡張していたことから,食餌性イレウス疑い,同日緊急手術を行った.臍部を3cm切開し,腹腔鏡で腹腔内を観察すると,回腸末端から約50cmの部位に硬い食物の嵌頓を認め,食餌性イレウスと診断した.腸管を創外に引き出し,milkingを試みたが困難で,やむなく腸管を3cm程度切開し,嵌頓した食餌を摘出した.腸管を縫合閉鎖し,手術を終了した.嵌頓していた食餌は干し柿であった.術後経過は良好で,第7病日に退院となった.詳細な問診を行うとともに,食餌性イレウスの特徴的なCT画像所見を認識し,術前診断することができれば,低侵襲な術式を選択することも可能となると思われた.
  • 小菅 誠, 矢永 勝彦, 瀧澤 玲央, 前田 剛志, 友利 賢太, 宇野 能子, 北川 和男, 大熊 誠尚, 衛藤 謙, 大木 隆生
    2015 年 40 巻 5 号 p. 903-909
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    当科において腹部大動脈瘤を合併した高齢者上行結腸癌に対して,ステントグラフト治療後に腹腔鏡下手術を施行し良好な術後経過を辿った2例を経験したので報告する.
    症例1:89歳,男性.腹部大動脈瘤を経過観察中であった.平成25年1月に検診で便潜血陽性を指摘された.内視鏡検査を施行したところ回盲弁対側に3cm大の腺癌を認め当院紹介となった.
    症例2:81歳,女性.平成25年8月に腹痛と血便あり内視鏡検査を施行したところ,回盲弁近傍に腺癌を認め当院紹介となった.腹部大動脈瘤を経過観察中であったが,徐々に増大傾向であった.
    いずれも初回にステントグラフト内挿術を施行し,症例1では7日後,症例2では12日後に腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.術後合併症なく経過し,初回術後それぞれ17,25日目に退院となった.
    本症例では低侵襲に二期的手術を行うことで良好な治療結果が得られた.今後同様な症例に対して有効な治療法と考えられた.
  • 張 一光, 高尾 嘉宗, 原田 潤一郎, 堀田 正啓, 福岡 猛, 山本 一仁, 内田 英二
    2015 年 40 巻 5 号 p. 910-915
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例1:43歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院し,急性虫垂炎と診断し虫垂切除術を施行した.病理結果にて虫垂杯細胞カルチノイド,深達度ss,中等度リンパ管侵襲,切除断端陽性のため追加切除を勧め,本人の希望にて他院紹介となり右結腸切除が施行された.腫瘍の遺残,リンパ節転移は認めず,現在術後1年3カ月経過するが無再発生存中である.症例2:67歳,男性.右下腹部痛を主訴に受診され,急性虫垂炎と診断し腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.病理結果は虫垂杯細胞カルチノイド,深達度ss,脈管侵襲を認めなかった.追加切除は,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.病理結果は,カルチノイドの遺残,リンパ節転移を認めず.現在術後6カ月経過するが無再発生存中である.杯細胞カルチノイドは典型的カルチノイドに比べ予後不良であるが,手術療法,化学療法ともに治療法が確立されていないため,更なる症例の蓄積が期待される.
  • 下田 陽太, 関川 浩司, 山崎 将人, 太田 竜, 池田 博斉, 成田 和広
    2015 年 40 巻 5 号 p. 916-921
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.腹痛を主訴に来院,S状結腸軸捻転の診断でハルトマン手術を施行した.術後は経過良好で一度退院したが外来経過観察中に腹部膨満を自覚した.注腸造影検査では残存大腸はびまん性に拡張し左側横行結腸~下行結腸のハウストラが消失していた.慢性特発性大腸偽性腸閉塞症の診断で左側横行結腸~下行結腸を切除し右側横行結腸人工肛門造設術を施行した.その後は症状再燃なく経過し右側横行結腸と残存直腸を吻合した.患者は現在症状の再燃なく外来経過観察中である.
  • 三瀬 昌宏, 東出 俊一, 松宮 弘喜, 米永 吉邦, 矢田 善弘, 花木 宏治, 神田 雄史, 野田 秀樹, 若宮 誠, 黒澤 学
    2015 年 40 巻 5 号 p. 922-927
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.53歳時,右乳癌(invasive ductal carcinoma,papillotubular carcinoma,pT4bN3aM0,Stage ⅢC,ER(+),PgR(+),HER2(3+))の診断にて右胸筋温存乳房切除術施行後,化学・ホルモン療法施行.術後5年目,右鎖骨上リンパ節転移,多発骨転移,肺転移出現.化学療法・ホルモン療法にて肺転移消失.その後4年間,転移性骨腫瘍は再燃軽快を繰り返すも,逐次薬剤を変更しlong SD(stable disease)の状態であった.術後9年目,転移性肝腫瘍(組織生検にて乳癌肝転移)および直腸癌を認めたため,ハルトマン手術を施行.手術所見にて直腸癌原発巣周囲に腹膜播種を認め,病理組織所見により腹膜播種は乳癌由来と判明した.更に直腸癌原発巣漿膜側で腹膜播種した乳癌と直腸癌が衝突していたという極めて稀な症例を経験したので報告する.
  • 久保 直樹, 芳澤 淳一, 花岡 孝臣
    2015 年 40 巻 5 号 p. 928-932
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.検診にて便潜血陽性を指摘された.下部内視鏡検査を施行したところ,直腸Rsに0-Ip病変を認めEMRを施行した.病理組織学的に高分化腺癌,9mm,sm massive,ly0,v0,断端陰性と診断され直腸前方切除術(D2)を施行した.追加切除標本の病理組織検査では癌の遺残,リンパ節転移は認めなかった.術後1年10カ月後のCT上右肺尖部に径5mmの結節を認めた.その後ゆっくり増大傾向を認めたため術後2年6カ月後に肺部分切除術を施行した.標本の病理組織学検査では直腸癌の組織と極めて類似しており直腸癌の転移と診断された.直腸手術から5年9カ月,肺切除から3年3カ月経過したが,再発を認めていない.大腸sm癌が肝転移などを伴わずに肺転移のみをきたすことは稀であり文献的考察を加え報告する.
  • 山村 喜之, 梅本 一史, 鈴木 友啓, 加藤 航平, 武藤 潤, 中西 喜嗣, 吉岡 達也, 村川 力彦, 大竹 節之, 大野 耕一
    2015 年 40 巻 5 号 p. 933-937
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    再発直腸癌に対するmFOLFOX6療法により,高アンモニア血症を経験したので報告する.症例は73歳,男性.直腸癌に対してハルトマン手術を施行した.術後補助化学療法としてUFT/UZELを6カ月間内服した.術後9カ月に腹膜播種を認めたため,バイパス手術施行後にmFOLFOX6療法を施行した.治療開始2日目に意識障害を認め,MRIを施行したが,異常所見は認めなかった.血液検査では高アンモニア血症を認めた.5-FUに起因する高アンモニア血症による意識障害と診断し分岐鎖アミノ酸投与と持続的血液透析を施行した.翌日には意識障害および血中アンモニア値は改善した.mFOLFOX6やFOLFIRI療法など高容量の5-FUを投与した際に,意識障害を認めた場合は,高アンモニア血症に留意すべきである.
  • 石川 隆壽, 本間 重紀, 柴崎 晋, 川村 秀樹, 高橋 典彦, 武冨 紹信
    2015 年 40 巻 5 号 p. 938-943
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    フルニエ症候群は外陰部,会陰部を主病変とする壊死性筋膜炎で,周囲に広がり致命的になりやすい疾患であるが,直腸癌が原因となることは稀である.フルニエ症候群の原因となる直腸癌は,進行癌であることが予想され,予後不良と考えられている.今回フルニエ症候群の原因となった直腸癌において,長期無再発生存が得られている症例を経験したため報告する.症例は74歳の男性で,陰部の疼痛にて近医受診し,フルニエ症候群と診断され,当院救急科紹介となった.同日泌尿器科および形成外科にて陰茎陰囊摘出術,デブリードメント,膀胱瘻造設術を施行した.その際直腸膀胱瘻を認めフルニエ症候群の原因と考えられ,精査で直腸癌と診断された.術後16日目に骨盤内臓全摘術,直腸切断術,および尿管皮膚瘻造設術を施行した.術後経過良好で,第43病日に転院された.その後化学療法希望されず,経過観察となり,現在4年10カ月時点で再発なく,生存中である.
  • 服部 桜子, 阿部 勇人, 山崎 慎太郎, 高根 希世子, 松野 順敬, 吉田 直, 檜垣 時夫, 高山 忠利, 下田 勝巳, 仲沢 弘明
    2015 年 40 巻 5 号 p. 944-948
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性.横隔膜に浸潤する径11cmの巨大な肝原発性卵黄囊腫に対し肝部分切除および横隔膜合併切除を施行した.術後2カ月に横隔膜下に局所再発を認めたため,広範な横隔膜合併切除を伴う再肝切除を予定した.横隔膜欠損孔の単純閉鎖が困難であったため,5cm×5cmの欠損孔に対し右大腿筋膜を用いて再建を行い良好な結果を得た.大腿筋膜は遊離移植片として短時間で簡便に採取できる生体材料であり,人工材料と比較して感染に強く,機能欠損も認めないため,有用な再建材料の一つである.広範な横隔膜合併切除が必要な際に,大腿筋膜による横隔膜再建術は一般外科医にも行える有効な手段の一つと考えられたため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 辻田 英司, 池田 泰治, 金城 直, 山下 洋市, 田口 健一, 岡留 雅夫, 齋藤 俊章, 森田 勝, 藤 也寸志, 岡村 健
    2015 年 40 巻 5 号 p. 949-953
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の肝転移切除症例を経験したので報告する.症例は74歳,女性.5年前に当院にて子宮頸癌にて放射線療法を施行.今回,画像にて肝S5に肝腫瘍を2ケ指摘された.他に転移巣がみられなかったことから手術適応ありと判断し,肝S5部分切除を施行した.病理診断では扁平上皮癌であり,子宮頸癌の肝転移と診断した.術後2年無再発生存中である.
  • 坂本 里紗, 清水 哲也, 山本 悠史, 松木 裕輝, 杉政 奈津子, 齊藤 修治, 松田 悟郎, 関戸 仁
    2015 年 40 巻 5 号 p. 954-960
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,左側胆囊胆管結石症に対し,腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)を行った1例を経験したので報告する.症例は65歳女性.心窩部痛を主訴に来院.肝酵素逸脱を認め,精査目的で入院となった.腹部造影CT検査,磁気共鳴膵胆管造影検査(MRCP),内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)で胆囊壁肥厚,胆囊内結石,総胆管結石像を認めた.門脈臍部から門脈右枝が分岐し,胆囊の肝左葉への付着を認め左側胆囊(LSG)を疑った.内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い,総胆管結石を摘出し一時退院後,LCを行った.手術は通常当院で行っている4ポートで開始した.胆囊管は総胆管右側に合流し,胆囊底部は肝外側区域に付着しているLSGであった.底部の剝離を先行し肝門部まで剝離するとCalot三角の展開が可能となり,追加ポート挿入なく胆囊を摘出した.LCを安全に行うために術前に胆囊の位置異常を正確に診断し,胆囊管や胆管,門脈の走行を確認する必要がある.
  • 門野 賢太郎, 河本 和幸
    2015 年 40 巻 5 号 p. 961-966
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性,受診4カ月前より下痢と体重減少が出現した.血液検査にて低K血症,膵vasoactive intestinal polypeptide(以下,VIPと略記)の上昇,腹部CTにて膵頭部に40mm大の多血性の腫瘤を認め,VIP産生膵内分泌腫瘍と診断した.2009年11月幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.免疫染色にてVIP染色陽性であり,組織学的にVIP産生膵内分泌腫瘍と最終診断した.術後,下痢,低K血症は軽快し,血中VIP値は低下した.術後3年9カ月再発を認めていない.VIP産生腫瘍は難治性水溶性下痢,低カリウム血症,胃無酸症の三徴などを呈する稀な腫瘍である.切除術により良好な経過を得た膵VIP産生腫瘍の1例を経験したので報告する.
  • 尾﨑 裕介, 坂口 孝宣, 森田 剛文, 新井 義文, 松田 宏一, 今野 弘之
    2015 年 40 巻 5 号 p. 967-975
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.2011年6月胃癌に対して胃全摘・胆囊摘出・Roux-Y再建術を施行された.最終診断はT1aN0M0fStage ⅠAであり,外来経過観察をしていた.2012年2月肝機能異常の精査目的で腹部造影CTを施行,十二指腸乳頭付近に腫瘍が疑われた.膵管の拡張は認めず,ダブルバルーン内視鏡検査にてVater乳頭より口側の十二指腸下行脚に隆起性病変を認め,生検にてadenocarcinoma(tub1)を認めた.十二指腸癌を疑い同年4月膵頭十二指腸切除術を施行,病理組織検査にて副乳頭の膵管を原発とする浸潤性膵管癌と診断された.今回われわれは比較的稀な疾患である副膵管領域原発膵癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 安藤 太郎, 佐々木 章, 梅邑 晃, 新田 浩幸, 佐藤 孝, 阿保 亜紀子, 石田 和之, 若林 剛
    2015 年 40 巻 5 号 p. 976-983
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.増大傾向を示した脾腫瘍の加療目的に当科紹介となった.腹部造影CT後期相で淡く造影される長径50mmの腫瘍を認め,PET-CT検査でも集積を認めたため悪性腫瘍を否定できず腹腔鏡下膵尾部・脾臓摘出術を施行した.病理組織学的には,線維性間質を伴う血管腫様結節内にcord capillaries(CD34+/CD8-/CD31+),sinusoids(CD34-/CD8+/CD31+),small veins(CD34-/CD8-/CD31+)の3成分が存在したためsclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)と診断した.増大傾向を示した術後膵瘻に対して内視鏡下胃内ドレナージを施行したが,術後2年を経過して再発なく経過している.今回,SANTの自験例と国内の報告例について検討したので,内視鏡下胃内ドレナージの経過とともに報告する.
  • 甲田 貴丸, 中崎 晴弘, 長谷部 行健, 種村 宏之, 船橋 公彦
    2015 年 40 巻 5 号 p. 984-987
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    気腫性膀胱炎はガス産生菌が膀胱壁内および腔内に感染しガスが貯留する膀胱炎で比較的稀な疾患である.
    症例は76歳女性,胃癌にて胃全摘術後,外来通院中に食欲不振の訴えにて精査目的に入院.入院後38.2℃の発熱,嘔吐を認め,血液生化学検査結果にてWBC21,870/μl,CRP2.5mg/dlと炎症反応の高値を認めた.腹部CT検査にて膀胱壁内に含気像を認め気腫性膀胱炎と診断した.尿道留置カテーテルを留置しパズフロキサシンメシル酸塩(PZFX)を3日間投与,治療開始翌日には解熱,2日目には血液生化学検査にて炎症反応改善,10日目に再検したCT像にて膀胱壁の含気像は改善,尿培養で菌も陰性化していた.
    気腫性膀胱炎は糖尿病や担癌患者などの免疫機能低下患者に発生することが多いと言われ,抗生剤の適切な使用により予後は良好とされるが,敗血性ショックおよび多臓器不全を合併する重症例も報告されている.
    気腫性膀胱炎はCompromised hostにおける発熱の原因の一つとして,念頭に置く必要があると思われた.
  • 松井 俊樹, 野村 浩史, 加藤 弘幸, 湯浅 浩行, 林 昭伸
    2015 年 40 巻 5 号 p. 988-993
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は91歳女性.腹部の手術歴はなし.入院1週間ほど前より膿性帯下および発熱を認め,入院当日,腹部膨満,腹痛が出現し当院救急外来を受診した.腸閉塞および子宮留膿腫の診断で入院となったが,経鼻胃管を留置されるも症状は改善せず,翌日当科紹介となった.ロングチューブは高度の食道裂孔ヘルニアがあり,留置できず,保存的治療が奏効しなかったため,入院3日目に手術を行った.手術所見として,回腸が子宮底部に付着して屈曲し,腸閉塞を呈していた.操作中,その付着は容易に剝がれ,子宮内から大量の膿汁が流出した.以上から子宮留膿腫の穿孔部が閉塞起点となった,機械的腸閉塞と診断し,右付属器,子宮切除を施行した.術後敗血症を発症し,集中治療で改善傾向であったが,既往の心不全が悪化し,第25病日に永眠された.子宮留膿腫は外科医が普段接することの少ない疾患であり,既報告例の治療法を集計・検討し,報告する.
  • 橋本 一輝, 大島 貴, 金澤 周, 五代 天偉, 山本 直人, 湯川 寛夫, 利野 靖, 國崎 主税, 今田 敏夫, 益田 宗孝
    2015 年 40 巻 5 号 p. 994-1001
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は17歳の女性で,左上腹部の膨隆を主訴に当科を受診した.左上腹部に小児頭大の弾性硬の腫瘤を触知したが,腫瘍マーカーを含め,血液生化学検査所見に異常値は認めなかった.CTでは胃と横行結腸の間に両者を圧排する充実性の腫瘍を認め,MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示した.さらにPET-CTでは腫瘍に高い集積を認めたため,増殖力の高い間葉系腫瘍を疑い,手術を施行した.腫瘍は最大径220mmで大網後葉に存在し,横行結腸脾彎曲部および横隔膜の一部に浸潤しており,これらを合併切除した.摘出標本の重量は2,600gで,割面は灰白色・充実性であった.病理組織学的検査所見にて腹腔内デスモイド腫瘍と診断した.術後4年8カ月経過した現在,再発を認めていない.
  • 館 正仁, 國枝 克行, 河合 雅彦, 古田 智彦, 須原 貴志, 山田 敦子
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1002-1006
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.46歳時に腹腔内に囊胞性病変を指摘されたことがある.以後,約8年にわたり異常は指摘されていない.2011年3月に発熱,右側腹部痛を主訴に近医受診した.腹部CTでは右側腹部に直径10cm大の単房性囊胞を認め,造影CTにて,支配血管は右胃大網動脈と考えられた.MRIでは,内部T2高信号で,充実成分は認めず消化管との連続性ははっきりとしない囊胞性病変を認めた.手術目的で当院に紹介された.
    当院にて大網囊腫,重複腸管,腸間膜囊腫,リンパ管腫などを疑い開腹腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は右上腹部を占めており,胃,横行結腸,腹壁,胆囊に癒着していた.胃,横行結腸壁の一部は合併切除した.
    標本は11cm大の単房性囊胞で内容物は黄色粘稠な壊死物を含む液体であり,胃,横行結腸と交通は認めなかった.病理組織学的には腸管構造は認められず重複腸管の所見は確認されなかった.壁構造には炎症細胞浸潤を認め反応性変化を認めた.
    以上より支配血管は右胃大網動脈であり,大網より発生した囊胞性腫瘍であると判断し,感染を伴った大網囊腫と診断した.
  • 満山 喜宣, 古川 賢英, 柴 浩明, 衛藤 謙, 三森 教雄, 矢永 勝彦
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1007-1012
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.腹部腫瘤を自覚し,近医受診.腹部CTで肝門部から後腹膜にかけて腫瘤性病変を認め,精査加療目的で当院紹介となった.腹部CT,MRIで右後腹膜に20cm大の腫瘤を認め,後腹膜由来の悪性腫瘍の診断にて手術を施行した.腫瘍は周囲組織に浸潤しており,膵頭十二指腸切除に加え,右腎摘出,右半結腸切除,下大静脈合併切除を施行し,腫瘍を切除しえた.病理診断は平滑筋肉腫であった.術後1年5カ月で局所再発を認め,全身化学療法を開始したが徐々に全身状態が悪化し,術後2年4カ月目に腫瘍死した.今回,膵頭十二指腸切除術に加え周辺臓器合併切除により切除しえた巨大後腹膜平滑筋肉腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 保坂 敦子, 山崎 慎太郎, 高山 忠利
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1013-1018
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.腰痛を主訴に前医を受診しCT検査で左腎臓内側に位置する35mm大の後腹膜腫瘍を指摘された.腫瘍は境界明瞭で内部に粒状の石灰化を伴い,均一な造影効果を認めた.腹部MRIではT1で低信号,T2で軽度高信号を認め,腹部血管造影では左腰動脈を栄養血管とする腫瘍濃染像を示したが,確定診断は困難であった.腫瘍発見時から14カ月間経過し,大きさが60mmに増大し腰痛が強くなり,後腹膜神経原性腫瘍や悪性腫瘍の可能性を考慮して,開腹腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は60×50×30mm大の弾性硬,割面は黄褐色の充実性腫瘤で,病理組織学検査でhyaline vascular typeのCastleman病と診断された.
    われわれは,左腎臓近傍に位置し,急速な腫瘍発育を認めたCastleman病の1例を経験したので,これを報告する.
  • 白鳥 史明, 島田 英昭, 澤口 悠子, 谷島 聡, 大嶋 陽幸, 名波 竜規, 鈴木 隆, 伊藤 正朗, 鷲澤 尚弘, 金子 弘真
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1019-1023
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性.食道扁平上皮癌に対して非開胸食道抜去術+後縦隔胃管再建+腸瘻造設術を施行した.無症状であったが術後第5病日の胸部単純X線検査で左肺野に腸管ガス像を認めた.胸腹部CT検査を施行したところ横行結腸が左胸腔内に脱出しており,食道裂孔部間隙から腸管が脱出したと診断し緊急手術を施行した.術中所見では,食道裂孔部間隙から横行結腸が左胸腔内に脱出していた.脱出した横行結腸に血流障害や周囲組織との癒着は認めず,容易に腹腔内に還納できた.横行結腸間膜と肝三角靭帯を用いて食道裂孔部間隙をパッチ閉鎖し手術を終了した.術後にたこつぼ型心筋症を認めるも保存的加療にて軽快し,ヘルニア術後第44病日で退院となった.
  • 山崎 康, 吉井 久倫, 数野 暁人, 小熊 潤也, 小澤 壯治
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1024-1029
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.幼少期より右鼠径部の膨隆を認めており,2年前から増大傾向を認めたため当院を受診した.右鼠径ヘルニアの診断で前方アプローチでのヘルニア根治術を施行した.術中所見では右鼠径ヘルニア(Ⅰ-2)が認められ,ヘルニア囊を開放するとヘルニア囊と癒着した虫垂が認められた.ヘルニア囊を横断し癒着した虫垂より末梢で高位結紮を施行し,Lichtenstein法で修復した.また末梢のヘルニア囊は先端まで切除した.Amyandʼs herniaという比較的稀な症例であり,本邦報告35例の集計を加え報告する.
  • 丹羽 真佐夫, 関野 考史, 木村 真樹, 関野 誠史郎
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1030-1036
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.2013年10月に検診異常の精査で胃gastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と直腸カルチノイドと診断され,当院紹介受診した.腹腔鏡下胃楔状切除・直腸超低位前方切除術,回腸人工肛門造設術を施行した.手術時間は4時間47分,出血量は15mlだった.病理組織学的検査の結果,胃:免疫染色でCD34(+),c-kit(+),Ki-67 labeling index 1~3%,でありIntermediate risk(modified-Fletcher分類)のGISTと診断した.直腸:免疫染色でsynaptophysin(+),chromogranin A(+),CD56(+)でありカルチノイドと診断した.胃GISTと直腸カルチノイドに対して,ポート位置や小開腹創の位置などを工夫して腹腔鏡下同時手術を施行しえた.
  • 森 至弘, 小倉 俊郎, 坂本 裕彦, 大庭 華子, 石川 英樹, 豊田 哲鎬, 高橋 遍, 江原 一尚, 福田 俊, 川島 吉之
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1037-1044
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.血便を主訴に近医を受診,胃癌・直腸癌と診断され当院を紹介.血清AFPの著明な上昇を認め,またCTにて多発肝転移を認めた.胃の病変の生検にてAFP陽性であり,AFP産生胃癌と考えられた.CapeOX療法を計10コース施行したところ,AFPは陰性化し多発肝転移も著明に縮小したため,幽門側胃切除術・低位前方切除術・肝部分切除術を施行.術後は補助化学療法を行わずに外来にて経過観察中であり,術後3年3カ月現在,無再発である.
    AFP産生胃癌は胃癌全体の数%と比較的稀な組織型である.一般に肝転移をきたしやすく,予後不良とされている.本症例では直腸癌を併存していたためCapeOX療法を施行した.今回,われわれは同時性肝転移を伴う,AFP産生胃癌と直腸癌の重複癌に対し,化学療法を行った後に手術を行い,比較的長期生存を得ている1例を経験したため,報告する.
  • 稲岡 健一, 竹田 伸, 中山 裕史, 近藤 建
    2015 年 40 巻 5 号 p. 1045-1051
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性で,他院で下血の精査にてS状結腸癌と診断され,S状結腸切除術,D2郭清を施行された.病理は中分化型腺癌,SS,N0,M0:Stage Ⅱであった.1年後にCEA上昇を認め,PET-CTにて右肺転移・左副腎転移と診断され,当科へ紹介となった.mFOLFOX6+Bevacizumabによる化学療法を施行しPRが得られ,新規病変の出現は認めなかったため,初回手術2年後に胸腔鏡下右肺上葉切除術を施行した.その1カ月後,腹腔鏡下左副腎摘出術を施行した.肺・副腎ともに組織学的にS状結腸癌の転移と診断された.術後補助化学療法uracil-tegafur/leucovorin療法を行い,経過観察中である.本邦における大腸癌の副腎転移を切除した報告は少なく,今回S状結腸癌術後,異時性に肺転移・副腎転移を腹腔鏡下に切除しえた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
トピックス
feedback
Top