2016 年 41 巻 2 号 p. 209-214
症例は72歳,男性.特別な症状を認めなかったが,胃食道逆流症の経過観察目的で施行された上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁に隆起性病変を指摘され当科に紹介された.生検にて鋸歯状腺腫様の上皮変化と核異型を認めGroup3腺腫と診断された.7年前の同検査では病変は認められていない.原発性十二指腸癌の併存を念頭におき病変部を含めた腹腔鏡補助下幽門側胃切除術による病変完全切除とリンパ節郭清を施行した.局所切除は術後狭窄などの偶発症発生と追加手術を回避する目的で選択しなかった.病理診断は深達度SMでN0であった.深達度SMの十二指腸病変に対しては,術前CTでN0であればリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除も選択肢の一つと考えられた.