2016 年 41 巻 5 号 p. 813-819
患者は80歳代,男性.咳,腹痛のため来院した.精査にて著明な腸管拡張,膀胱拡張,門脈ガス血症を認めた.腸管虚血や壊死を疑わせる所見はなく,非腸管壊死性門脈ガス血症と診断し保存的治療を選択した.来院13時間後の再検造影CTで腸管拡張の改善とともに門脈ガス像は消失しており,門脈ガス血症は著明な腸管拡張による腸管内圧上昇によって発症したと考えられた.その後経口摂取を開始しリハビリを経て入院後28日目に退院した.腸管拡張を伴った門脈ガス血症を認めた場合,①腸間膜動脈および腸管壁の造影性が良好で腸管虚血の所見を認めない,②腹膜刺激症状がない,③ショックを呈していない,という条件下では保存的治療を完遂することが可能と考えられた.